就活をテーマにした小説が誕生した。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が激賞する。
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超絶面白い本と出会いました。採用活動の現実がわかる小説です。『あの子が欲しい』(朝比奈あすか 講談社)がその本です。著者の朝比奈あすかさんは第49回群像新人文学賞の受賞者ですね。いくつかの新聞の書評欄で紹介されていたので、気になって購入しました。
この本は新進のIT企業である株式会社クレイズ・ドットコムに勤務するヒロイン川俣志帆子が、採用チームの仲間とともに取り組む様子が描かれています。
この「小説」、本当は「ノンフィクション」なのではないですかね? 読んでみて、いきなり、そんな「文句」を言いたくなりました(冗談です)。それくらいリアルに今どきの採用活動と就活、採用担当者と学生を描いています。あまりにも採用活動・就活の「あるある話」がいっぱいで、最初から最後までニヤニヤしながら読んでしまいました。
採用活動のために、2ちゃんねるなどのネット掲示板を覗く、時には書き込みをして話の流れを変える、Twitterのフォロワー数を増やそうとするなど、ネット時代の採用活動でよくあるシーンも生々しく描かれています。「そんなこと、しているのかよ?」とか「所詮、小説だからでしょ?」と思うかもしれませんが、いえいえ、全部よくある話なのですよ。
最後の方に出てくる、この企業の合格者数、内定受諾者数、内定辞退者数なども、本当にこの業界、規模の企業でよくありそうな数字で、びっくりしました。本当の数字を持ってきたかと思いましたよ。
ネタバレになりますので、多くは語りませんが、終盤の学生を口説き落とすための心理戦は圧巻です。なんとか「ウチの会社」に来てもらうための駆け引きですね。これもですね、よくあることなのですよ。さらには、最後には、いわゆるFランク大学に通う学生が、行きたい企業の内定に至るための裏ワザ(いや、正攻法の直球勝負とも言えますが)も紹介されています。お楽しみに。
採用担当者の私生活の描き方も、いま採用に関わっている20代、30代女性にいかにもありそうな話で、リアルでしたよ。
前述したように、「小説じゃなくて、ノンフィクション、ルポルタージュみたいだな」と思いました。作り話っぽいところがひとつもないのです。でも、小説形式で描くことにより、採用担当者と学生の思惑、心理状態などがよくわかります。学生の立場からだと、理不尽に思えるようなことがなぜ行われるのかも、ストーリーで読むと、理解できるかと思います。
「採用担当者も大変なんだ……」そんなことがよくわかる本なのです。そうなんです。採用担当者は、日々、学生と真剣に向き合わないといけないですし、ネット上の噂もチェックしないといけませんし、社内調整もありますし、なんせ、学生や他社との駆け引きなどもあり、もう大変なのですよ。