国内

自己責任論、原発、雇用 ネットの二項対立の発生背景と帰着点

「既婚者×未婚者」「子育て経験者×子育て未経験者」「自己責任論者×人命尊重派」「原発容認派×脱原発派」――考え方が異なり過ぎるがため、かつては接することがあまりなかった人々が互いの存在・意見をネットで知ることができるようになった。さらに、直接相手へ意見を伝えることができるようになったため、ネット上では「二項対立」が日々発生している。ネットの伝統的二項対立の一つである「きのこの山VSたけのこの里」のような呑気なものではなく、昨今は人の生き方や、命に関するものまでその幅は広がっている。

 今年に入っても、いわゆる「イスラム国」による邦人人質事件で「人命尊重派」と「自己責任論者」が激しくぶつかり合った。デヴィ夫人は人質の後藤健二さんに自決を勧め、これが論争を呼んだ。何としても助けなくては、と呼びかける人々に対しては匿名の人々から「バカ」「迷惑かけるな」「税金の無駄遣い」などと容赦のない罵倒がツイッター等で寄せられた。官邸前では「I am Kenji」のプラカードを掲げる人が登場するも、これに対してもネット上では自己責任論者が彼らを「サヨク」扱いし、叩く。その一方で、自己責任論者に対しては「ゲスなヤツリスト」が作られ、人命尊重派からの批難を浴びる結果となった。

【二項対立の発生メカニズム】

 こうした二項対立がネット上で発生する理由について、『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書)著者で、同書に掲載した「対立キーワード一覧」でネットの二項対立の実例を詳しく説明したネットウオッチャーのHagex氏はこう語る。

「インターネットで発生する『二項対立』は『娯楽』です。これはサッカーや野球ファンと構造が同じです。一般的な議論における知的遊戯もありますが、対立することによって生まれる『面白さ』と『鬱憤晴らし』にネットユーザーは参加し楽しんでいるのです」

 そして「面白さ」と「鬱憤晴らし」が一体何に起因しているのかを解説する。

「『面白さ』については、野球にしろサッカーにしろ『贔屓チーム』を見つけて、応援した方が楽しみは増します。『護憲派が良いか悪いか』という単独構造ではあまり盛り上がりませんが、『護憲×憲法改正』という対立構造の方がより炎上し参加者も増します。『阪神のチームとして善し悪し』よりも、『阪神と巨人はどちらが素晴らしいチームか』の方が盛り上がるのと同じです。

 議論に参加・鑑賞する際は、多くの人は中立ではなく、無意識にどちらのチームか選んでしまいます。また、数多くのネット媒体(まとめサイト等)が恣意的な編集をし、特定のチームに肩入れした記事を公開しており、そのファンは喜び、それを目にした中立的な考えを持った無知な人間を自分たちの陣営のファンとして獲得していきます。『鬱憤晴らし』については、サッカーのフーリガンのようなもので、ネットの二項対立で大暴れするモチベーションも『テーマに対する議論』ではなく、生活のストレス発散や社会への不満を爆発させるための素材となっている場合が多々あります」

 特に政治に関しては、ネットでは激しい対立が発生する。その中でも、結論が出ないものの毎度燃え上がる話題の3大巨頭ともいうべきが「憲法改正への賛否(含む米軍基地問題)」「原発稼働への賛否」「雇用問題」である。

 一体論争の終着点はどこにあるのか。もはや交わることのない両者は一体どうすればいいのか。当事者ではない人々が互いに争い、いつの間にか分断されて、結局は国内で様々な争いを呼んでしまう。ここでは、ネットの現状と、関係者の意見、そして最後にHagex氏による解決案を提示しよう。

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト