マーリンズに移籍したイチローのユーモアTシャツが話題になっている。ただの話題作りというなかれ。そこには大人の思惑が込められている!? 大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が「イチローに大人の裏表を学んだ」と説く。
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今年からマイアミ・マーリンズでプレーするイチロー選手。1月24日(日本時間25日)、キャンプ施設に初登場したとき着ていた「ツンデレTシャツ」が、大きな話題を呼んでいます。
前には、マーリンズの球団名の由来となったカジキのかぶり物をしたイチローの顔をした少年のイラストと、小さくひらがなで「♪おうえんしてくださいなんて~ いわないよ じぇったい~」の文字。そして背中には、太めのゴシック体で「応援よろしくお願いします」と書かれていました。
これは明らかに、1月29日に東京で行なった入団会見で「これからも『応援よろしくお願いします』とは僕は絶対に言いません。応援してもらえる選手でい続ける」と宣言したことを意識したデザイン。会見での宣言は、さすがイチローらしい名セリフだと多くの野球ファンをうならせましたが、ごく一部には「素直じゃないなあ」「なんでそういう言い方するかな」と批判する声もありました。
そんないろんな声を受けた上で、Tシャツの前と後ろで反対の意味の言葉を書くところに、イチローのお茶目さが発揮されています。後日イチローは、2012年から4年連続でネタTシャツを作ってきたことを踏まえて、「それなりに歴史をつくってきたっていうか、その効果が出ましたね。今までの流れがあってのこれだから」としてやったりの表情で語ったとか。大ウケしたことがかなり嬉しかったようです。
それはさておき、イチローのカッコよさをあらためて示した「ツンデレTシャツ」には、複雑な思いを表現するヒントが詰まっています。ビジネスマンの世界でも、部下や上司に対して、気持ちを素直に伝えられない場面は少なくありません。大人としては、イチローの華麗なバットコントロールならぬ、華麗な裏表使い分け力に学びましょう。
部下に急な残業を頼みたい場合は、おずおずと「もし大丈夫だったらでいいんだけど」と話しかけ、その段階で「あっ、ちょっと待って」と振り返っていったん自分の席に戻ります。あらかじめ背中に「ぜひともお願い」と書いた紙が貼ってあって、振り返った時にそれが部下に見えるという寸法。その上であらためて「残業、頼んでいいかな」と持ちかければ、こちらの真意を汲み取ってきっとOKしてくれるはずです。