またも安倍内閣の大臣が辞任した。昨年の小渕優子元経産相、松島みどり元法相に続いて、西川公也前農水相で3人目だ。西川氏の辞任のきっかけは、2月19日の衆院予算委員会での玉木雄一郎・民主党代議士による質問だった。
玉木氏は民主党内で「疑惑のスナイパー(狙撃手)」と呼ばれ政権の追及役を務めており、西川氏が農水省の補助金交付団体や企業から違法献金を受けていた問題を追及して辞任を迫った。
その日の夜10時過ぎ、追及がよほど堪えたのか、したたかに酔って西川氏は会合から農水省に戻った。そこで待ち受けていた多くの記者を前に、なんと“報復”を口にした。記者のメモから再現する。
「今日私に質問した人のデカイの(記事)が出るんだって? こんなところにいたら抜かれるぞ。みんな(問題が)あるんだから。おれも聞いた話だから、確度はメチャクチャ高い」
西川氏の予告通り、翌日、玉木氏の事務所に産経新聞と、同じフジサンケイグループの夕刊フジの記者が連れだって取材に訪れた。そして産経新聞は2月22日付で〈民主・玉木氏団体に280万円 同一代表者、8社から 西川農水相への寄付「脱法」追及〉と見出しを掲げ、玉木氏の政治資金問題を報じた。
政治資金規正法では「同一の者から150万円を超えて政治資金パーティーの対価の支払いを受けてはならない」と定めている。産経報道は、玉木氏が同じ人物が経営している8社から合計280万円のパーティー券を購入してもらっており、「分散献金」による上限逃れではないかという指摘だった。朝日新聞も〈民主・玉木議員後援会、同じ社長の8社から280万円〉(朝日新聞デジタル)と後追いした。
ある自民党幹部は「疑惑のブーメランだ」と、してやったりの表情だった。
メディアのチェック機能は与野党双方に向けられるべきで、野党議員であっても資金疑惑があれば報じるのは当然だ。しかし、産経の記者が取材する前から、西川氏が「記事が出る」と吹聴していたことは、報道の裏に、安倍政権・自民党との緊密な連携があった可能性を濃厚に示している。