ヒットの方程式、は複雑で難解だ。要素を揃えれば数字になるかというとそうでもない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。
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真木よう子、二階堂ふみ、高畑充希。女性たちから共感とエールを集める、旬な人材がズラリ。綺羅星のような女優たちが揃って、セクハラ・パワハラオヤジどもを見返す。男社会の理不尽さに向き合い、勝負を挑む「女性応援コメディ」ドラマ。それが、木曜夜放映中の『問題のあるレストラン』(22時~フジテレビ系)。
脚本は、『最高の離婚』『Woman』等で話題になった坂元裕二。配役も制作陣も、世の流れに乗ってヒットする条件が整っていそうに見えます。
ドラマの構成も、凝っています。専業主婦、東大出身の秀才、ゲイ、ひきこもり……。タイプのまったく違う7人が、1つのレストランに結集して、「絶対に見返してやる!」と男社会に仕返しを宣言。これって、現代版『七人の侍』? あの映画の女性版トリビュート?
ロケの風景もいい。舞台は裏原、表参道から少し入った裏通り。都会の空が見える屋上レストラン。背景の高層ビル、入り組んだ路地が、東京という舞台のリアルな感じを上手く醸し出している。
それなのに……。世間ではさほど話題にのぼらず、7回目までの平均視聴率も一桁台とふるわない。それはなぜ? いったいどこに「問題のあるドラマ」?
初回は、女性社員が男性上司からひどいセクハラを受けるシーンで幕を開けました。ミスの責任を負わされ、幹部の男性社員たちの前で全裸になり謝罪を要求される、という過激なシーン。
どうせフィクションだし現実の中にもセクハラはあるし。とは思いつつも、そこまで極端なシーンを見せられると、素朴に気分が悪くなる。
脚本家は真面目に、女たちのがんばりを応援しよう、という意気込みなのでしょう。セクハラ問題を世に知らしめ社会に問題を喚起していきたい、と語っていました。
その言葉通り、ドラマの中で男性社員の言動はセクハラ、パワハラの応酬。飲み会でお酌を強要し、女は金で買うものだとか平気で言い、結婚して子どもを生まない女は失格で、男に触られた方が女は綺麗になるという価値観をふりかざし……社長役の杉本哲太、部下役の吹越満、田山涼成らの演技が、あまりにも上手で力が入っていて、見ていてつらい。
そもそも、仕事で疲れた木曜日の夜、そんなシーンを数々見せられて、元気が出るワーキングウーマンがいる?
「よーし闘うぞ」、「しっかりと問題に目を向けよう」と、奮起する気分になれる?
『問題のあるレストラン』の問題は、そのあたりに潜んでいそう。刺激の盛りすぎ。視聴率が今ひとつ伸びないのも、女性視聴者の素直な共感が集められないことに起因していそうです。