甚大な被害を受けた航空自衛隊松島基地がある東松島市を安倍首相は2度訪問している。菅原節郎・市議がこう指摘する。
「総理が視察した先は、松島基地と小松南団地という市内でも復興が進んだほんの一部だけ。そこにテレビや新聞の記者も同行するから、県外の人から『復興は順調に進んでいる』と思われている。
ところが、小松南団地から車で10分も行けば仮設住宅が立ち並ぶエリアがあり、143人の犠牲者が出た東名地区には震災後から手つかずのままの荒れ地が広がっている。総理にはぜひバランスのとれた視察をしていただきたい」
本誌記者は首相が視察した岩手・大槌町の水産加工会社や山田町の造船会社などを訪問した。たしかにそれらの建物はピカピカだ。しかし、その建物は無残な荒野の真ん中にポツンと建っていた。
官邸にとっては首相の被災地訪問はパフォーマンスでしかない。官邸筋によれば「総理の視察先は復興が目に見える形で進んでいるところを主として選定している」という。岩手県の幹部職員が苦々しい顔で話す。
「安倍首相が視察すると、同じ施設を閣僚が視察し、さらに復興庁の官僚が同じルートをなぞるケースが多い。首相の訪問先が“復興先進地”なので、中央から来た人は厳しい現場を素通りして帰ることになる」
※週刊ポスト2015年3月20日号