ビジネス

立ち食いそばブーム 週6で食すコラムニストがその魅力考察

小盛りそばに納豆天とせり天をトッピングして計200円也

 コシのない麺に出汁の香り。ついふらふらと立ち寄ってしまう立ち食いそばがいまブームだ。その魅力についてコラムニストのオバタカズユキ氏が考察する。

 * * *
 大きな声で言いふらすような話ではないのだが、ここ数か月、立ち食いそばにハマっている。きっかけはお気に入りのバーで一人飲みをした帰り道、小腹が減って立ち寄った店のインパクトがとても強かったことだ。

 宣伝のために書くわけじゃないので、24時間営業のその店名を仮に「全力そば」としておこう。なぜって、そこの店主推定60歳前後のオヤジさんは、本当にいつも全力で仕事に打ちこんでいるからだ。

 彼は止まらない。横幅5メートル奥行1メートルくらいの長細いカウンターの内側をしょっちゅうカニのように横歩きしながら、ずっとそば作りと客の応対をしている。せわしないというだけなら他の立ち食いそば店も同様だろうが、彼は仕事に対する没頭力が並みじゃない。それが証拠にというか、オヤジさんはいつも歌っている。電車の車掌さんのアナウンスにアメ横の叩き売りのだみ声を少し混ぜたような音色で、こんなふうに歌う。

「は~い、いらっしゃい、何にしますか~? はいっ、おそばにゲソ、それに紅ショウガ半分っ。ゲソと紅ショウガ半分、110円と50円におそばで360円。よろしかったら360円。ゲソと紅ショウガのおそばをハイどうぞ。よろしかったら360円~♪」

 要は注文と計算の確認なのだが、なぜ歌うようにするのかは不明だ。客からすると自分の頼んだメニュー内容と合計金額を何度も店内中にアナウンスされるので、抵抗を覚える人もいるかもしれない。ただ、私が観察してきた限り、そこでたじろぐような客は「全力そば」で見たことがない。

 客層は多様だ。早朝はニッカポッカを履いたお兄さんらをはじめとした肉体労働者系、真昼は周辺の雑居ビル等にお勤めのサラリーマンが多い。夜は職種ない交ぜで老いも若きもやってくる。深夜はタクシードライバーや私のような正体不明系が目立つ。客のほぼ全員は男だ。

 一人客が基本。複数人連れでも、がやがや騒いだりしない。男たちが黙々と、お好みの天ぷらにかぶりつき、こしのない茹で麺を魚出汁のキックが効いた色の濃いつゆの中から箸で引きずり出しては、はふはふ胃の中に送りこんでいる。

 もちろん、店内はおしゃれじゃない。感動的な美味が食えるわけではない。でも、オヤジさんのシフトじゃないときもオバちゃんや若い店員がテキパキ働いていて、24時間いつ訪れても活気がある。かなりトッピングを増やしてもワンコインでお釣りが来るから、客は値段を気にせず食べたいものを食べたいだけ頼んで食べて満足そうに帰っていく。

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン