砂糖など糖類が健康に悪いとする議論が活発になってきている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
* * *
今月4日、世界保健機関(WHO)が「砂糖などの糖類を一日に摂取するカロリーの5%未満に抑えるべき」とする指針を発表した。翌5日の日本経済新聞では「WHOは過去にも糖類摂取量の抑制を図ろうとしたが、米国の砂糖関連業界などが強く反発し、実現できなかった」としている。
低糖質ダイエットの流行などにも象徴されているように、実はこの数年、健康被害の原因だとやり玉に挙げられる”悪者”が、脂肪から糖へとシフトしている。
2012年、アメリカの小児科医たちが「砂糖の害はたばこや酒と共通している」という指摘を英国科学雑誌「ネイチャー」に発表した。
2013年には『ナショナルジオグラフィック』誌が『Sugar Love (A not so sweet story)』(邦題は「砂糖の誘惑、その甘くない現実」)という企画で、「肥満、糖尿病、高血圧、心臓病を抱える住民の割合が全米で群を抜いて高い」という全米屈指の”肥満街”、クラークスデールを取り上げた。
「一部の専門家は、その元凶を砂糖とみている」とし、さらに「住民の祖先の多くは、アフリカから連れて来られ、砂糖生産に従事した黒人奴隷なのだ」と砂糖と生活習慣病の関係性を指摘した。
さらに2014年1月、”Journal of the American Medical Association Internal Medicine(米国内科学会誌)”に発表された「心臓病での死亡率は年齢、性別身体活動レベルに関係なく、摂取した砂糖の比率に比例する」という研究で、砂糖害悪論は決定的なものとなった。
この発表では「摂取カロリー全体の17~21%を砂糖から摂取している人は、8%を摂取する人より心疾患での死亡リスクが38%高くなる。21%以上となるとそのリスクは倍以上になる」と砂糖と心疾患の関連が指摘されている。