国内

総事業費5363億円 被災地で進むかさ上げ事業に住民不満の声

かさ上げの土を運ぶベルトコンベアも設置(陸前高田)

 東日本大震災から4年──被災者を置き去りにしたまま、巨額の予算がつぎ込まれる「かさ上げ事業」が進んでいる。

 かさ上げ事業が組み込まれた土地区画整理事業は3県48地区で工事が進み、総事業費は5363億円に達する巨大プロジェクトだ。なかでも1800人もの犠牲者を出した岩手・陸前高田市は、平成30年までに総事業費1200億円を見込み、126ヘクタールを平均12メートルかさ上げして1376戸が住むことを想定する。

 かさ上げのための土は、山を切り崩し全長3キロの巨大なベルトコンベアが運ぶ。その量、1日10トントラック4000台分に及ぶ。かさ上げされた土地に建物が建つのは3~4年後という計画だ。仮設商店街の店主が話す。

「12メートル地盤を上げるというけど、震災のとき津波は18メートルを超えていたんです。同じ規模の津波に襲われたらひとたまりもありません。役所は『そんなことありません』というけど、納得いく説明がないのに誰が家を建てますか」

 同様に、総事業費376億円を見込む土地区画整理事業が進み、3地区85.6ヘクタールを整備する宮城・気仙沼市。「理容 鹿折軒」(ししおりけん)を営む小野寺光男さんは、一時的な避難所としてかさ上げされた土地に昨年移転してきた。

「移転費用は出してもらいましたが、来年の夏にはここから正規にかさ上げされた場所に移るようにいわれています。そこに本格的な商店街を作るという計画ですが、区画整理が終わるのは5年後だそうです」(小野寺さん)

 国や自治体は楽観的な将来の青写真を描くが、現実には多くの店舗が廃業や移転を決め、街から姿を消している。かさ上げ工事の様子を眺めながら、商店主のひとりが「潤うのはゼネコンだけだよ」とつぶやく。

 被災者につきつけられる険しい毎日と未来への不安。巨額な復興の予算は、最も必要とされるところに本当に使われているのだろうか──。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2015年3月27日号

関連記事

トピックス

11月14日に弁護士を通じて勝田州彦・容疑者の最新の肉声を入手した
《公文教室の前で女児を物色した》岡山・兵庫連続女児刺殺犯「勝田州彦」が犯行当日の手口を詳細に告白【“獄中肉声”を独占入手】
週刊ポスト
宇宙への憧れを持つ大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平が抱く“宇宙への憧れ” 野口聡一さんに「宇宙人っていますか?」と質問、チームメイトと宇宙談義に花を咲かせることも
女性セブン
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
「SUNTORYドリンクスマイルBAR」
《忘年会シーズンにこそ適正飲酒を》サントリーの新たな取り組み 自分に合った “飲み“の楽しさの発見につながる「ドリンク スマイル」
NEWSポストセブン