高齢化と少子化により、子供の数を超える約2000万頭の犬や猫が飼われている日本。2015年は団塊の世代が65才以上となり、約4人に1人が高齢者という高齢化社会に突入する。同様に高齢化しているのがペットだ。ペットフード協会が行った平成26年全国犬猫飼育実態調査によると、7才以上の高齢犬は55%にもなる。
日々一緒に暮らしていても、ペットが老いていくスピードは早い。彼らの老いを実感する日は突然やってくる。多くの飼い主が一日でも今のまま健康的に長生きしてほしいと願うものの、果たしてそのために何か行動はできているのだろうか? また、飼っているペットが病気になり介護が必要になってしまうことで、ペットとの“老老介護”も懸念される。
とはいえ、もしペットに介護が必要になっても、自分たちの手で介護をしてあげたいという飼い主は多い。P&Gジャパン、アニコム損害保険、セーブペットプロジェクト、富士通ら複数のペット関連企業・団体で構成される「ペット長寿国プロジェクト」が犬と猫の飼い主1000人に行った調査によると、サービスに頼りたいと回答したのはわずか5.6%で、過半数は自宅でペットのケアをしてあげたいと回答している。
また、同プロジェクトの調査によると、日本で実際の平均寿命は犬14.2才、猫15.0才なのに対し、飼い主が全うしてほしいペットの希望寿命はそれより+1.9~2.7才だという。しかし、ペットが健康に長生きするための充分な知識を飼い主が持っていないのも実情だ。
自身の加齢とともに、ペットの老後ケアや介護に不安を覚える飼い主も少なくない。ペットが健康で介護無しでいられる「健康寿命」を延ばしたいと回答した飼い主は、約8割にものぼる。その一方で、そのためのペットケアの知識について「充分」と回答した人はわずか16.6%だった。では、実際にどのようにケアしたら、ペットの健康長寿を叶えることができるのだろうか。
福岡県獣医師会会長で室見動物病院院長の草場治雄さんによると、ペットの健康的な長寿のために重要なのが、適切な「食事」「運動」「定期予防」の3大ポイントだという。
まず「食事」は、ペットの筋肉を維持し、健康的な長生きに不可欠な運動のために非常に重要だ。「ペット長寿国プロジェクト」の調査によれば、加齢とともにペットの消化機能が衰えていることが、飼い主の不安につながっているという。
「犬と猫の祖先は肉食動物です。そのため、ほとんどの歯は肉を引き裂くために尖っています。犬や猫の腸は短く、身体の構造が違うため、人間にとってバランスのいい食事が犬や猫にとっていい食事とは限りません。例えば、人間にとって健康に良いといわれるねぎ類は、犬や猫が食べると体調不良を起こす場合があります。
犬や猫の食事にかかせない6つの栄養素は、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水です。特に身体機能を支えるために各種アミノ酸が不可欠です。その元となるのがたんぱく質で、健康的な長生きのためには、良質な動物性たんぱく質が必要なのです。特に、消化吸収機能が衰えるシニア期には、消化吸収に適した動物性たんぱく質中心のフードを与えることが重要なのです」(草場さん)
「ペット長寿国プロジェクト」は、動物性たんぱく質中心のフードの見分け方として以下をアドバイスしている。
・ペットフードのパッケージに記載されている原材料名を見る。
・原材料名は含有量が多いものから表記されている。
・肉類が一番初めに記載されている製品を選ぶことで動物性たんぱく質中心のフードが見つけられる。
次に「運動」は、骨格や筋肉、内臓機能の活性化を促し、生活習慣病を含めて罹患リスクを下げるため、充分に気を配りたいもの。