きっかけは国境なきEC(ヨーロッパ共同体)の誕生だ。1986年にスペインとポルトガルがECに加盟したことで両国から無関税で安価な農産物が入ってくるようになり、競争力の低いオランダの農民は窮地に立たされた。
危機感を抱いたオランダは、まさに“選択と集中”で施設園芸にフォーカスするとともに、農業を農民中心に考えずに「産業」と捉えて地域別に農地と生産品目を集約するなどの改革を断行し、付加価値(=競争力)の高い「クオリティ農業」にシフトして躍進したのである。
現在の日本が置かれている状況も、このEC時代のオランダに似ている。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の妥結が目前に迫り──安倍政権の農政改革も実態はアメリカをはじめとする“外圧”の結果だが──これを奇貨として、今こそ日本はオランダのようなクオリティ農業に一気に転換すべきだと思う。
※週刊ポスト2015年3月27日号