【著者に訊け】朝倉かすみ氏/『乙女の家』/新潮社/2000円+税
そうか。今は昭和40年代の元祖ヤンキーに、高校生の孫がいる時代なのか!! そんな歴史的事実(?)の発見一つとっても、朝倉かすみ氏の新作『乙女の家』は楽しく、どこか感慨深い。
舞台は曽祖母78歳、祖母58歳、母42歳、そして主人公〈若竹若菜〉が17歳の、シングルマザーの多い女系一家。曽祖母〈和子さん〉は良家の子息と内縁関係を貫き、祖母〈洋子さん〉は〈初代ロイヤルストレートフラッシュ総長、安藤智己〉の娘を16歳で出産。母〈あゆみ〉も銀行員の父〈功〉と別居中の今、中学3年の弟〈誉〉が唯一の男子だ。
昭和の芸能ネタから美容談義まで、脱線続きの女子トークが延々繰り広げられる中、若菜は自分探しならぬ〈キャラ探し〉に夢中だ。今も夕食は一緒に囲む父、祖母の熱愛疑惑等々、取るに足ることも足らないことも山積の一家には、なぜか今日も、笑いが絶えない。
「今回は新聞小説だったので、暗い事件やニュースに胸を痛める人が1日1回はクスッと笑える話を書こうと。1日3枚弱だから2.5枚に1回は笑っていただく仕掛けです(笑い)」
『肝、焼ける』『田村はまだか』等で知られる朝倉氏も作家生活10周年。私生活では「昭和アイドル歌謡部」部長も務め、「大の芸能好き、ミーハー」を自称する。
「ここ数年はクレージーキャッツ。今はジュリーにも回帰中で、昔はジャネット・リンとかフィンガー5とか御三家とか、流行っているものは全部好きでした。和子や洋子の時代は誰がスターで何が流行ったかも頭に入っているし、実際の親戚のおばがその手の話題に俄然色めき立つのも好きだった。自分は知らなくても、えっ、ジャニーズってグループがいたんだ、とか、なぜか芸能話は幾つになっても女子の好物なんです」