■「合理的なやめ方」を考えるべき

 だからこそ、原発を使うことも仕方ないかな、という議論が生まれるのですね。原発の危険が分かるからこそ、カネをかけて安全対策を作り、より安全性に考慮した高いレベルの新基準を作るべきなんです。でも、原発が稼働していないので、拠出するカネがないのです。廃炉の費用がかかるとはいえ、原発で安い電気を作っておけば、40年くらいで廃炉にしても利益は出るんです。

 私は、こういう風に、合理的なやめ方を考えるべきだと思います。進むのも、退くのも合理的でなくてはいけません。闇雲に、原発の比率50%にする、とかいうのもやり過ぎです。震災後の0%もやり過ぎです。

 当面は25%~30%くらいが妥当なんじゃないですかね。CO2を出さず、安定したエネルギーを提供できるのは核燃料以外にはないんですよ。いや、身も蓋もないですが、再エネに期待するのは無理ですよ……。原子力の代替になれるのは石炭ですが、CO2が出ます。CO2除去のための技術を作る必要がありますが、それはまだできていない。

 そして、再エネを本気でやりたいのなら、蓄電池が必要になります。今も蓄電池はありますが、バカ高いので実用化できない。それが実用化できるぐらいまでの技術開発ができるのであれば、その時こそ原子力も石炭もいらなくなります。22世紀とかまでにはできるかもしれませんが、政治も行政もそこまで考えている余裕はないですよね。今のことに必死ですから。

■絶対に落ちない飛行機はない

 原子力やめるのはいいんですよ。でもね、原子力発電所って停まっていても危ないものですよ。使用済み燃料は冷やさなくてはいけないからです。そして、冷やすためには電気が必要です。処理をするにしても、核のゴミが冷えるまでには30年から50年はかかります。放射能が漏れない強固な容器を用いてもそれだけの時間がかかる。そう考えると、処理するための費用を稼ぐためにも原子力発電所は動かさなくては仕方ない。動いていても動いていなくても、原発を放置するのは危険なこと。再度言いますが、福島の事故はあくまでも「大津波」にやられてしまったものです。今、停止中の原発に大津波が襲っても危ないことに違いはありません。

 原発反対にしても、“不自由がない国”だから反対運動が活発化するのですよ。消費税増税反対デモといっても、官邸前に何万人も来るわけではない。数パーセント増税しても、「まっ、そこまで苦しくはならないかな……」と思うからこそ、デモに参加しないのです。

 政府は原発に関し、様々な情報を発信してきましたが、目立つものではありませんでした。私は官僚だったので、当然政府が発表した内容は知っていましたが、一般の人は関心がなかったと思います。何かが発生すると関心はようやく高まります。高速バスで事故が発生し、そこで過酷な労働の実態が浮き彫りになり、収益のために運転手が休めないことが明らかになった。でも、その事故が起きるまで、長距離バス業界がブラックだとは誰も思ってなかったんです。

 全部が全部きれいにはできないんです。どこか適当なところで収めておこうよ、という考えにはいけないのでしょうかね? 絶対に落ちない飛行機はありませんし、絶対に安全な車も薬もない。パソコンだって、突然データが飛んだりすることがないとは限らない。それは、「しょうがない」とどこかで思っているから許せるところがある。

 パソコンやスマホの場合は「多分壊れないんじゃないの」と思いつつ、実際に壊れたらおそらくあたふたするからこそ、その前に機種変更をしておく。“どうにかなる”前の機種変更なんですよ。原発の場合は、その日がいつ来るか分からない。40年なのか? 60年なのか? それはいつなのか分からないので、40年ではなく、せめて10年に1回は入念に点検しておきましょう、ということが重要だと私は思います。

関連記事

トピックス

松田烈被告
「スマホから『映してください』と指示の声が…」ネットで“性的暴行してくれる人を募集”した松田烈被告(28)、被害女性が語った“外道すぎる犯行”
NEWSポストセブン
ジャーナリストの溝口敦氏(左)とフリーライターの鈴木智彦氏
《溝口敦氏×鈴木智彦氏が対談》山口組抗争終結後の暴力団 勝ったはずの六代目山口組含めて勢力は縮小、トクリュウのほうが経済規模も大きく勢いがある現状
週刊ポスト
真美子さん(共同通信)が使用していたブランドとは
《ハワイ・ファミリーデートで真美子さんが持っていたプチプラバッグ》「同年代インフルエンサーのアスレジャーブランド」か?と話題に 実用性の高いトートバッグ、大谷は「娘のベビーカー担当」
NEWSポストセブン
アメリカのトランプ大統領と、ベネズエラのマドゥロ大統領(AFP=時事)
《日本への影響も》トランプ政権のベネズエラ攻撃・大統領拘束作戦 中国・ロシアの参戦リスクは 今後の「3つのシナリオ」
NEWSポストセブン
元“ぶりっ子”さとう珠緒の現在の恋愛観は……?
「事実婚じゃダメですか?」「あ、別居婚ならいいのかな」元“ぶりっ子”さとう珠緒(53)が明かす現在の“自分を大切にする恋愛観”とは 
NEWSポストセブン
核保有の是非を“議論”することすら封殺される状況に問題はないのか(時事通信フォト)
《あえて問う「核保有シミュレーション」開発費用と年数》専門家は「日本の潜在的技術能力なら核弾頭開発は可能」と分析 原潜に搭載なら「3兆~5兆円の開発費と年5000億円の維持費」
週刊ポスト
一世を風靡したビートきよしの現在とは
《意識失い2025年に2度の救急搬送》難病で体重22キロ増減のビートきよし、週3回人工透析も…“止められない塩分摂取”「やり残したことなんてない」 
NEWSポストセブン
年末、大谷夫妻はハワイで過ごしていたようだ
《お団子白コーデの真美子さんに合わせたペアルック》大谷翔平の「イジられる」魅力…ハワイではファンに妻と笑顔の対応、後輩も気を遣わない「自信と謙虚さのバランス」
NEWSポストセブン
川島なお美さんを支え続けた、夫でパティシエの鎧塚俊彦氏(2011年10月)
《また恋をしたいとは思っています》パティシエの鎧塚俊彦氏、妻・川島なお美さんを亡くして自問自答の10年「僕らの選択は正しかったのか…」
NEWSポストセブン
引退する棚橋弘至(右)と、棚橋への思いを語る武藤敬司(左)
《棚橋弘至がついに引退へ》「棚橋も俺みたいにハゲていけばよかったんだよ」武藤敬司が語ったかつての付き人に送る“はなむけの言葉”
NEWSポストセブン
餅つきに現れた司忍組長
《六代目山口組の餅つきに密着》近隣住民も驚いた「6時間の“ヨイショ”の掛け声」…高山清司相談役の登場に警察が驚愕したワケ
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」新春合併号発売! 2026年を見通すオールスター14対談ほか
「週刊ポスト」新春合併号発売! 2026年を見通すオールスター14対談ほか
NEWSポストセブン