本誌のコレステロール基準値報道には大反響が起き、前号ではついに日本の厳しい基準値を作成した重鎮医師がその根拠があいまいであることを認めた。今回はさらに、その基準値で“病気”とされた人に処方される薬剤のリスクを追う。
本誌は3号連続で「コレステロールは悪者」という日本の“常識”を覆す最新研究を紹介した。東海大学名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所長らによる大規模調査では、男女とも“悪玉”とされてきたLDLコレステロール値が高いほど死亡率が低いという驚くべき結果が出た(2008年発表)。つまり「コレステロール値は高いほうが長生き」ということだ。それは逆にいえば「低いと早死に」を意味する。
にもかかわらず日本では動脈硬化学会のガイドラインによって、LDLが120mg/dl以上は指導対象、140mg/dl以上は脂質異常症と診断される。
保健指導や食事療法とともに、医師の判断でコレステロール低下剤が処方され、3800億円の巨大市場を形成している。となると単純に、「コレステロール値は高い方が長生きなのに、薬で下げてしまうとどうなるのか?」という疑問が生まれる。実は薬を飲んでコレステロール値を下げると、やはり死亡リスクは高くなるという研究結果がある。
コレステロール低下剤を服用中の人だけを対象とした「J-LIT(日本脂質介入試験)」と呼ばれる臨床試験がある。薬を飲んでいる約5万人の男女を6年間(1999年まで)追跡調査し、総コレステロール値と死亡率などの関係を調べたものだ。
その結果、低下剤によって確かにコレステロール値が下がること、そして「コレステロール値が低いほど総死亡率が高い」ことがわかった。つまり薬で数値を下げると死亡リスクが上がるということだ。