世界的にベストセラーとなっている、トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』。同書では、格差の分析や経済政策の提言部分などが注目されがちだが、「個人レベルの運用においても参考になる部分が多数あります」というのは、家計の見直し相談センターの藤川太氏だ。藤川氏が、同書から読み取れる「お金持ちになるためのヒント」について解説する。
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フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本』が世界中で注目されています。700ページもの分厚い本を読むには少々手こずるかもしれませんが、一言で表現すれば、いま世界で最も優れた「お金持ち本」といえるでしょう。
この本は3世紀にわたる世界20か国以上の所得に関するデータを収集・分析し、富と所得の歴史的な変動について論考を重ねた経済の専門書ですが、ただの経済本ではありません。お金持ちになるためのヒントが随所にちりばめられているのです。
同書のカバーには「r>g」と一見謎めいた数式が書かれていますが、ここに最大のエッセンスが込められています。「r」は資本の年間平均収益率で、不動産や株式、債券などあらゆる資産から生まれる収益率。「g」は経済成長率、つまり労働によって得られる所得の増加率を示します。それを不等式で表わし、「資本収益率rは経済成長率gより高い」ことを示しています。ピケティ氏は歴史的に見て、その数値をrは4~5%、gは1~2%で推移しているとしています。
資産が生み出す利回りは常に労働所得の伸びを上回っている─言い換えれば、「ただマジメに働いているだけでは、資産を持つお金持ちには追いつけない」というわけです。
私もこれまでの経験からそう感じていましたが、改めてこの本が体系的に示してくれたと思います。
このようなピケティ氏の主張に対して、現代社会では誰にも平等にチャンスがあるはずといった反論もあるでしょう。しかし、資産を持つお金持ちほどさらなるお金持ちになりやすい傾向がある。それが「歴史的事実である」とピケティ氏は述べているのです。