現在、国内で実施されている腸内細菌移植療法は、配偶者や2親等以内の健康な人の便を移植する。事前に生理食塩水と混ぜ、フィルターでろ過し、大腸内視鏡で患者の大腸の奥の方に注入する。200グラムの便の中には、相当数の腸内細菌が存在していると思われ、それを直接、移植してバランスの乱れを直す。
「私の臨床研究では、腸内細菌移植の前に、3種の抗生剤を2週間服用する抗生剤療法を併用しています。この治療でも潰瘍性大腸炎への治療効果が証明されています。事前に腸内細菌をリセットし、その後、移植することでより効果的に腸内細菌フローラが定着し、異常な免疫作用に刺激を与え、回復に向かうのではと考えています。事実、この治療で治癒した患者の中には、アレルギー体質が改善した例もあります」(石川助教)
昨年からの臨床研究で、20例が治療を受けた。特に中等度から軽症では治療後2~3週間で効果が表われ、半年後には下痢などの症状が改善している例もある。
移植による感染などを防ぐため、提供者の健康状態や便に含まれる有害な細菌やウイルス、寄生虫などのチェックを厳しく行なっている。最終的には30例に実施して有効性を確認する予定だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年4月10日号