昨年9月、高校野球ファンの注目を集めるニュースが栃木の下野新聞に載った。開校5年目の幸福の科学学園野球部が秋季栃木大会でベスト8に進出。県8強は各都道府県の高野連が選ぶ21世紀枠の選考対象となる。甲子園の常連校・作新学院に敗れたものの、大会前まで公式戦未勝利だった同校にとっては大躍進だった。
同校の母体は幸福の科学である。総裁の大川隆法が創始し、公称信者数1100万人。教団の総本山である那須精舎の敷地に隣接して学園校舎とグラウンドはある。
ナインは地元出身というわけではない。全寮制なので生徒は全国から集まり、職員と共に寄宿生活を送っている。校長の喜島克明と一緒に練習を見学した。
「最初の頃の練習試合のスコアは0-50でした」
校長はとうとうと創部時の様子を語り始めた。相手は矢板中央高校で、試合後に幸福の科学の部員は、相手チームの監督である樋下田宏一に「どうしたら野球がうまくなるんですか」と詰め寄った。その熱意に感動した樋下田は、矢板中央を定年退職した2011年に同校の監督に就任し、その後入信した。
白地に赤い文字で「幸福の科学」と入ったユニフォームを着て、選手たちはグラウンドに立つ。気になったのは、帽子に縫われた「RO」の校章だ。幸福の科学の英語表記はHappy Scienceだったはず。
「ROは大川隆法総裁のイニシャルからデザインされた幸福の科学のシンボルマークです」(喜島)
帽子に校名ではなく創立者のイニシャルを入れる学校は幸福の科学学園ぐらいだろう。
同校は昨秋の栃木大会で公式戦初勝利を飾り、夏にコールド負けした足利工大附属にも勝利した。初戦敗退を続けてきた野球部はなぜ強くなったのだろうか。