誕生から55年目を迎える航空自衛隊の曲技飛行隊・ブルーインパルス。その正式名称は「第11飛行隊」で、宮城・松島基地の第4航空団に所属する。同隊にとって今年最初の大舞台となったのが、3月26日、「平成の大修理」を終えた姫路城上空での祝賀飛行だ。
前日のうちに宮城から各務原の岐阜基地に移動したパイロットたちは、朝5時に起床。6時に基地内の宿舎を出てブリーフィングルームに集合すると、気象隊員から姫路城付近の天候についての詳しい報告を受ける。
隊員全員で綿密な飛行計画を詰めている頃、駐機場ではクルーによる離陸前の整備作業が進む。パイロットの命を託された男の背中には、近づくことが憚られる緊張感が漂う。
打ち合わせを終えたパイロットは、ヘルメットやパラシュートを装着するための器具の点検を終え、下半身の血流をコントロールするパイロットスーツを装着する。フライト中、パイロットには最大6Gという高い重力が掛かるためだ。年間展示飛行は20回を超える。訓練も含めると、肉体へのストレスは想像を絶する。
すべての準備を終えると、離陸の30分前に愛機へと向かう。
「安全な飛行をするためにも、最終的なチェックは自分の目でしなければなりません」(隊長を務める日高大作2佐)
9時30分、6機は爆音を残して離陸。30分後には、6万人の観光客が見上げる姫路城の空で美しい5種類の弧を描いた。
「コックピットからも集まったお客さんの姿が見えました。多くの人に見ていただくことで士気も高まります。今回は満点をつけていい飛行だったと思います」
岐阜基地に戻ってきた日高隊長は、控え目な笑顔で語った。次のフライト予定は4月11日の「第90回高田城百万人観桜会」(新潟・上越市)。今度はどんなサプライズを見せるのだろうか──。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年4月17日号