2015年になってイスラム過激派により日本人が殺害される事件が相次ぎ、日本政府にも対外情報機関創設をという機運が高まっている。ひとくちに「情報部」と言われても、日本人には映画や小説でしか縁がない組織だ。首相が先導する「日本版CIA」は、このままでは題目ばかり先行して必ず失敗すると作家の落合信彦氏が語る。
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この国の国会議員の無知蒙昧ぶりには、怒りを通り越して哀しみすら覚える。
ISIL(Islamic State of Iraq and the Levant)による日本人人質殺害事件を受けて、首相の安倍晋三は、国会(予算委員会)の場で「対外情報機関」の創設を検討していることを認めた。すでに自民党が協議を始めており、マスコミは早くも「日本版CIA」だの「日本版MI6」だのと騒ぎ立てている。
私は以前から、日本には対外情報機関の存在が不可欠だと訴えてきた。アフリカのマリやブルキナファソにすら、情報機関はある。国家のアンテナである情報機関を独自に持たない国など、本来ならあり得ないからである。
だが、その上で敢えて言うが、いまのままでは、この構想は失敗する可能性がきわめて高い。日本では何かとお題目だけが先行して、中身を考えず新しい箱さえつくればいいという考え方がある。今回と同じような思いつきでできたのが「日本版NSC」だが、あの人質事件の結果を見れば、日本版NSCなど何の役にも立たなかったのは明白である。いまのままでは、日本版CIAも全く同じ轍を踏むことになろう。
そもそも日本では、CIAがどのようにできたかという歴史的経緯すら、ほとんど知られていない。もちろん、安倍をはじめ国会議員たちは全く知らないことだろう。