個人消費は低迷を続け、景気は冷え込むばかり。今年2月の「2人以上の世帯」の消費支出は前年同月比2.9%減と11か月連続で前年を下回った(総務省「家計調査」)。
実質賃金は22か月マイナス(前年同月比)が続き、増税と値上げのトリプルパンチが国民生活に打撃を与えているが、中でも30代の買い控えが目立っている。
毎月の実収入と消費支出を前年と比較した内閣府のデータでは、30代だけが実収入の落ち込み(0.4%減)以上に消費支出の落ち込み(2.8%減)が際立って大きかった。つまり、30代は収入の減少では説明できないくらい買い物を控えているのだ。
代表的な事例が自動車関連支出だ。昨年10~12月とその前年の同時期を比べると、自動車にかける出費はひと月あたり約5000円も少なくなっている(「家計調査」の「自動車等関係費」)。「若者の車離れ」といわれるが、実は20代は約6800円増えている。30代が車から離れざるを得ない状況がうかがえる。
家電や住宅関係の出費も、他の世代が消費増税前の駆け込み需要の反動から徐々に回復しつつあるのに対し、30代では買い控えが続いている(総務省「家計消費状況調査」)。
彼らがモノを買えない理由は、取り巻く労働環境の厳しさにある。現在の30代は90年代後半から2000年代半ばに就職期を迎えた年代で、バブル崩壊後の就職氷河期の影響を直に受けた世代である。消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所の井上智紀・准主任研究員が語る。
「氷河期世代は非正規社員になるか、アベノミクスの恩恵が届かない国内内需に頼った中小企業に就職したケースが多い。円安の影響で物価が上昇するのに賃金が上がらないので消費を抑制する傾向が強い」