昨年10月に実施された、日本銀行による追加金融緩和(いわゆる「黒田バズーカ第2弾」)以降、為替市場は活況を呈している。それまで1ドル=110円以下で推移していた米ドル/円相場は、3月には約7年8か月ぶりに1ドル=122円台に突入。こうした円安の進行を受け、国内のFX(外国為替証拠金取引)の取引金額も急増している。2014年10~12月期の取引金額は、約1760兆円に達した。四半期ベースでは、2005年以降の最高水準である。
日本のFX取引は、世界の為替取引高の中でも大きなウェイトを占めている。また、売買手数料にあたるスプレッドでは世界で最も小さい水準(=手数料が安い)となっている。いわば、日本はFX大国だ。その日本のFXシーンで、今ある変化が起きている。
FXといえば、自分の判断で取引を行なう「裁量トレード」が一般的に知られているが、日本のFXで今、利用者が急増しているサービスは「システムトレード」(以下、シストレ)だ。シストレとは「自動売買」のことで、稼働させた売買プログラム(ストラテジー)が一定の取引ルールにしたがって、「売り」や「買い」といったFXの注文を自動的に行なってくれる。一昨年あたりから、このシストレの人気が急速に高まっているのだ。大手FX会社の広報担当者が語る。
「最近は、新規に開設される口座のほとんどがシストレ用の口座で、特に、20代など若年層の方の口座が増えていますね」
シストレ人気の背景には、2つの大きな要因があると言われている。ひとつめは、いったんシストレを始めれば、日中の仕事をしている時間帯をはじめ、寝ている間でも、チャンスがあればプログラムが自動的に取引を行なってくれる、という点。「1ドルがいくらになったか」なんて、もやもやしながら仕事なんかできない。シストレはそういったメンタルの部分も大きくサポートしてくれるのだ。
2つめは、FXにあまり詳しくないビギナーでも取引ができる点。つまり、普通のサラリーマンやOLでも、活用できるところが大きな魅力となっている。
なかでもFXのビギナーでも活用できるシストレとして、注目されているのがあらかじめ用意されている売買プログラムを「選ぶだけ」で始められるタイプのシストレだ。国内では利用できる国内のFX会社が増え、選べるプログラムの数が飛躍的に増加したことが、今のシストレブームに寄与しているとも指摘されている。売買プログラムはプロ投資家が作ったものをFX会社が選定しているケースが多い。そうしたプログラムは、ニュースなどでも話題になっている詐欺まがいのプログラムとは一線を画していると言えるだろう。
「選ぶ」タイプのシストレの中に「ミラートレーダー」と呼ばれるシステムがあり、それを採用している国内のFX会社は、インヴァスト証券、セントラル短資FX、FXプライム by GMO、FXトレードフィナンシャル、FXCMジャパン証券、アヴァトレードジャパンの6社。なお。ミラートレーダーではないが、売買ソフトを選ぶだけでシストレができる、類似したサービスを提供している会社は7社ある。利用できる売買プログラムの数は会社ごとに異なる。