ISILによる日本人人質殺害事件を受け、安倍晋三首相は対外情報機関の創設を検討していると発言した。日本には対外情報機関の存在が不可欠だと訴えてきた落合信彦氏は、いまのままではこの構想は失敗する可能性が高いと指摘している。成功させるにはどうすればよいのか、落合氏が解説する。
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日本が情報機関をつくる上で何が足りないかを述べるのは大変だ。欠陥があまりにも多すぎて、挙げればキリがなくなるからだ。
日本には、情報機関のもとになるような既存の組織がなく、人材もいない。日本の既存の情報部門のなかでマシなのは警視庁公安部ぐらいだろうが、日本版CIAを公安中心でつくることは、外務省が反対するだろう。日本版NSCのトップが谷内正太郎・元外務次官だったように、今回も各省庁の利権争いが予想される。だが、既存の省庁の寄せ集め組織になれば、日本版CIAは絶対に失敗する。
実はイスラエルのモサドもはじめは、外務省がコントロールする形の組織が想定されていた。それをひっくり返したのは、初代首相のデヴィッド・ベングリオンだ。彼は、情報機関は首相直轄の独立した組織でなければ意味がないと主張した。その結果、モサドは絶大な権限を得て、いまの地位を築いたのだ。
日本が情報機関をつくるには、独立した組織にした上で、エージェントの養成学校を創設してゼロから学ばせなければならない。教官としてモサドのOBを招聘するのも一つの手だろう。しかし、それも容易なことではない。CIA、SIS、モサドに入る一番の条件はIQが高いということで、モサドなどはIQ130以上でなければ受け付けない。50の電話番号を瞬時に頭に詰め込ませるテストなども行われる。
さらに、最低限3か国語は話せる必要がある。モサドでは8か国語を話せるエージェントが何人もいる。例えばイランのパーティーに行けば、当然ペルシャ語を理解していなければ話にならない。そこで、分かっていながらペルシャ語を知らないふりして、交わされる会話から情報を吸い上げるのがエージェントの仕事なのである。