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地方の買い物難民問題 現実に即さぬ法律が解消を困難にする

 地方コミュニティの疲弊問題が深刻さを増している。小泉純一郎政権以来「地方のことは地方で」がキャッチフレーズになった。ところが、いまや企業を含めた地域社会自体が崩壊寸前で対応できない現実がある。今回は地方における高齢者や障害者など弱者の移動・輸送問題をとりあげよう。

 高齢者が日常の買い物やちょっとした用事で外出するのに移動手段がなくて不便するという「買い物難民問題」が大都市で注目されているが、限界集落のような地域では一層、大変だ。

 そこで、岡山県真庭市は政府がネット上に開設している規制改革ホットラインに「自家用有償旅客運送の制度を買い物支援に使えるよう改善できないか」と訴えた。これは、たとえば特定非営利活動法人(NPO)が高齢者や身障者を運送する場合、自家用車も有償で使える制度だ。

 人だけでなく、注文に応じて食料や日用品なども配達できるようになれば、車を運転しない高齢者は助かるだろう。そんな狙いである。

 この提案に対して国土交通省は前向きだった。道路運送法には、いまでも乗合バスが少量の郵便物や新聞、貨物を運ぶのを認める規定がある。今回、新たに自家用車やタクシーにも認める制度を検討する、という。

 読者には「マイカーをどう使おうと所有者の勝手じゃないか」と思われる向きもあるかもしれない。だが、人やモノを有償で運送するのは道路運送法に触れる。白タク、白トラックは違法である。

 より深刻なのは身障者や要介護者の運送だ。こちらは福祉有償運送という制度の下で、いまでもNPOが実施できるようになってはいる。だが、現実には難題が立ち塞がっている。

 過疎地でNPOがバスを仕立てて身障者や要介護者を運ぶ事業を始めようとすると、事前に地元のタクシー業者などから了解を取り付けなければならないのだ。

 なぜかといえば、道路運送法施行規則で「地元自治体の長やバス、タクシー事業者、住民・旅客、地方運輸局長、NPOなどで構成する運営協議会の合意が必要」と定められているからだ。

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