政権、スポンサー、芸能事務所など、テレビ局はさまざまなタブーに配慮し、その顔色を窺いながら番組づくりを行っている。そのなかでも、現場の番組スタッフたちがいま、一番恐れているのは何か。
彼らの多くは「BPO」だと口を揃える。名前だけはよく聞くこの組織、一体なぜそんなに恐れられているのか。
BPO(放送倫理・番組向上機構)は、NHKと民放各社からなる民放連(日本民間放送連盟)が出資して2003年にできた任意団体で、「放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的」(BPO規約第3条)としている。
視聴者からの苦情や、取材対象者らによる人権侵害の申し立てをもとに、それぞれ10人程度の有識者からなる3つの委員会で番組について検証を行い、意見や要望などを通達する。ただし、これらには強制力がなく、テレビ局がそれをもとに独自に判断するだけだ。
しかし、このBPOをいま、テレビ局は過剰なまでに気にしているという。キー局の情報番組スタッフはこう話す。
「BPOは検証のうえで『問題なし』とするケースも多いんですが、番組側は『BPOに申し立て』というニュースが報じられること自体を気にするようになっています。
ワイドショーや情報番組は主婦層がメインの視聴者になるので、スポンサーも保険会社や洗剤、化粧品などイメージ重視の企業が多い。そういった会社は、実は視聴率よりも番組イメージのほうにうるさい。
『BPOに申し立て』と報じられると、それだけで番組イメージが損なわれるので、スポンサーが嫌がるんです。しばらく経って『問題なし』という結果だったとしても、それは新聞には小さくしか載りませんから。
だから、いまは『速報よりもウラ取り』が合言葉になっていて、視聴率が取れるスクープネタよりも、BPOで問題にされないように確実にウラ取りができる安全なネタが優先されるわけです」