台風などにも阻まれ2度の中断を余儀なくされた航海。2011年3月には航海の再開直前に東日本大震災が起き、医師でもある関野氏は日本人クルーらとともに、被災地の支援に入った。
「自然の圧倒的な力の前に科学の限界を思い知りました。人は自然環境なくしては生きられないんです。自然は支配する対象ではなく、感謝し、畏れるものだということを忘れてはいけない」(同前)
そして2011年6月、一行は石垣島に到着する。砂鉄集めから数えて、実に1130日の長きにわたった大航海が終わった。
「探検とは“気づき”だと思う。他人から見たら馬鹿なこと、無駄なことと思われることにこそ、多くの”気づき”があるんです」(同前)
インドネシアやフィリピンで出会った漂海民たちの暮らしなど、関野氏はこの旅で改めて「人間も自然の一部」だと気づいたという。
還暦をとうに過ぎ、探検は「今回で一区切り」としながらも、「次は何をしようか研究中」と、陽に灼けた顔で悪戯っぽい笑みを浮かべる探検家。新しい旅立ちの日は再びやって来るはずだ。
撮影■関野吉晴
※週刊ポスト2015年5月1日号