「とんでもない世界に来てしまったと思いました。普通じゃない世界ですよ。いろいろな人が関わって、話しかけてくるわけですから。正直、戸惑いました。

 デビューする少し前に一緒に飲んだ時、竜さんに言われたんです。『必ず勘違いするからな。いいか。お前は絶対に変わるなよ』って。『そうなんですか?』と聞いたら『間違いない』と言い切られました。

 ですから、『絶対に変わらないようにしよう』と、初心を忘れないように心がけてきました。たしかに、いろんな人がチヤホヤしてきたりするんですよ。そういう人は、一番弱い所に来るんです。

 竜さんと約束した時、『お前が十年このまま、今の精神のまま変わらないでいたら、俺は銀座で逆立ちでも何でも、お前の好きなことをやってやる。どこでも連れて行ってやる』と言ってくれたんです。それで十年後に『竜さん、十年経ちました』って報告したら『え、何が』って。『十年変わらないでいたら、銀座で逆立ちしてくれるって言いませんでした?』と言ったら、俺をジッと見るんですよ。それで『うーん、もう十年やれ』と言われまして。

 それで今度は二十年後に報告しに行ったら、随分長い間があって『ごめんなさい』って頭を下げてきたんです。

 竜さんの存在は、僕にとって本当に大きいです」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館刊)が発売中。

※週刊ポスト2015年5月1日号

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