イチローがまた通算得点記録の大記録を打ち立てた。記録に並ばれた王貞治氏の大人コメントが光る。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が解説する。
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バリバリの現役選手にして、すでに「伝説」の存在になっているマーリンズのイチロー外野手。日米通算4000本安打やMLB10年連続200本安打など、これまでに打ち立てた記録を数え始めたら1日や2日では足りません。そんな歩く、いや走る記録男が、また新たな大記録を打ち立てました。
今度は通算得点記録です。4月24日(日本時間25日)のナショナルズ戦の5回、同僚のタイムリーで生還したイチローは、日米通算で1967得点に到達。ソフトバンクの王貞治会長が持つ日本記録に並びました。この記事が出るころには、王さんの記録を追い抜く新記録を達成し、さらに数字を重ねていることでしょう。
スポーツで大記録が達成されたとき付きものなのが、破られた側のコメント。今回も王さんは球団を通じて、こう祝福しました。
「どんな記録も破られ、更新されるべきもの。この記録も、いずれ、彼に更新してもらえると思っていました。(MLBには)まだ上の記録があるんだから、これからも積み上げていってほしいね」
さすが、数々の記録を破られてきた王さんだけに、味わい深いコメントです。とくに「彼に更新してもらえると思っていました」という表現には、イチローに対するリスペクトや野球界全体の発展を常に考えている様子が漂っていて、王さんの懐の深さや大人の貫録を感じずにはいられません。
王さんは、2013年のシーズンでヤクルトのバレンティン外野手が、自らが持っていた本塁打のシーズン日本記録を49年ぶりに塗り替えたときにも、「ほとんど2試合に1本の驚異的なペース。どこまでいくかファンといっしょに楽しみたい」と祝福。それまでこの記録が破られそうになるたびに、王さんは意地悪な雑音を浴びてきました。「ファンといっしょに」というあたりから、「俺はもうこだわってないんだ。勝手にややこしいドラマを仕立てあげないでくれ」という心の叫びが聞こえてくるのは気のせいでしょうか。
イチローが2013年に日米通算4000本安打を達成したときには、3085安打のプロ野球記録保持者の張本勲さんはこう言って祝福しました。
「大あっぱれだ。4000本はとてつもない数字。精神力、技術、自己管理の3つが一致しないと、異国でヒットを重ねることはできない。ヒットを打つことに関しては群を抜いている。(中略)あれだけの選手は、今世紀は出てこないな」
張本さんはイチローが日米通算3000本安打を達成したときには、祝福しつつも「あくまで参考記録だが」というお約束の強がりも盛り込んでいましたが、もはや遠くに行ってしまった4000本のときは手放しで絶賛しています。それはそれで潔い態度と言えるでしょう。