相続税の課税対象が広がったことや、将来の介護不安などから、親がどれくらいお金(財産)を持っているか知りたいと思っている現役世代は意外に多いのではなかろうか。しかし、「オヤジさぁ、いくら貯金あるの?」なんて突然切り出しても、「何でお前に教えなきゃいけないんだ!」と機嫌を損ねさせてしまうのが関の山だろう。
そこで、元メガバンク支店長で『家族のお金が増えるのは、どっち!?』(アスコム)の著者である菅井敏之氏に、親子間でアンタッチャブルになっている“懐具合”を上手く探り出すコミュニケーション術を伝授してもらった。
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――親の経済状態を知ろうとすることは不謹慎なのでしょうか?
菅井:そんなことは全くありません。親にお金がなければ、歳を取って介護が必要になった場合にどう金銭面で支えていくかを考えなければいけませんし、資産があったらあったで、兄弟間の相続争いに発展しないとも限りません。親の資産の「引き継ぎ」は早めに確認しておく必要があります。
親の財産を知らなければ、たとえば子供が相続するはずだったお金が、銀行のすすめる投資信託に回され、気が付いたら資産が半分に減っていたなんて事態にもなりかねません。親の財産を「守る」ことも子の大切な役割なのです。
――とはいえ、親の経済状況を聞くことは容易ではありません。
菅井:1年に1度しか実家に帰らなかったり、電話もろくにしないような子供に、自らお金の話をしようと思う親はいませんよ。週に1回の電話でもいいから、親とのコミュニケーションを密に取ることが大事です。「今週は何したの?」「病院の検査結果はどうだった?」など、親に関心を持って心を開いてもらわなければ何も始まりません。
――いざ、本題を切り出そうと思ったら、どうすればいいのですか?
菅井:心を通わせただけで、親の財産を知る権利ができたと考えるのは大間違いです。まずは子自らの「資産内容」や「将来考えていること」を親にオープンにするべきです。
方法としては、現金、預金、株式、不動産などの項目を挙げ、住宅ローンなどの〈負債〉も紙に書き出します。そこに子供の受験や親との家族旅行など将来予定しているイベントも加えたライフプラン表を作成します。子供が「エンディングノート」やライフプラン表を買いて親に渡し、さりげなく親の分もプレゼントすればいいのです。
――確かに子供から先に資産公開すれば、親もマネープランが立てやすいですよね。
菅井:子供にこのようなノートを見せられて感心しない親はいないはずです。こうすることで、「孫が私立に行くなら、このくらい援助しようか」とか「家を壊してアパートを建ててから相続しよう」など、親の支援を受けられる見込みが立つかもしれません。
〈お金のことを考える〉ことは、〈家族のことを考える〉ことなのです。そこを透明化しておかなければ大塚家具のように骨肉の争いになってしまいます。親子でもホウレンソウ(報告・連絡・相談)は欠かせません。