褒める技術は大人としてのたしなみのイロハ。そのためには対象を深く観察する力と知識が必要がなくてはならない。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が「女性美」のひとつを考える。
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人は好ましいと思うものについては、詳しく知りたくなります。そして詳しく知れば知るほど、その魅力をさらに深く堪能できます。花の名前をたくさん覚えれば、花がもっと好きになり、花をもっと楽しむことができるでしょう。大人にとって知ることは何よりの愛情表現であり、最大限の敬意の示し方に他なりません。
おっぱいもしかり。しかし、こんなにも大好きで、折に触れて励ましてもらっているおっぱいについて、私たちは十分に知る努力をしているでしょうか。花の名前といえば桜かチューリップぐらいしか知らないようでは大人として情けないように、おっぱいをホメるときに「巨乳だ」とか「美乳だ」としか言えないようでは大人の名折れ。恥ずかしくておっぱいに顔向けできません。いや、それは困ります。
まずは、その形について基本的な分類を知っておきましょう。高低差が控え目な「皿型」、上下対称に盛り上がっている「円錐型」、お椀のようなドームのような「半球型」、力強く全体が突き出している「釣鐘型」と、おっぱいには大きく分けてこの4種類があります。もちろん、すべての形すべての大きさはどれも尊く、優劣も貴賤もありません。
今度、おっぱいと対峙する機会があったら、種類の名前を盛り込んだホメ方をしてみましょう。「まるで柿右衛門のように気品のある皿形だね」「幾何学の美しさを体現したというか、アルキメデスも裸で風呂を飛び出しそうな円錐型だね」「左右を合わせたら完全な球体ができそうな、まさに完全な美を備えた半球型だね」「108回撞いたらすべての煩悩を包み込んでくれそうな、神秘的な釣鐘型だね」……。たとえば、こんな感じでしょうか。
もちろん、それぞれの形状の気配は残しつつも、重力に身をまかせているタイプのおっぱいもあります。ホメるつもりで「いい垂れ具合だね」と言っても、おそらく喜んではもらえません。「男の顔は履歴書だっていうけど、女性のおっぱいは夢のゆりかごだね」などと抽象的な表現で持ち上げておくのはどうでしょう。物理的にも持ち上げつつ。