物語は主人公がDL学園の野球部寮に入るところから始まる。上級生から数々の「禁止事項」を言い渡されて、愕然とする主人公。
「1年生同士の私語は禁止」「女見るの禁止」「水は食事の時以外禁止」「笑顔禁止」
練習でノドが乾いたときはトイレに行くフリして、貯水槽の水を飲んだらええんやでぇ、と実際にPLの選手から聞いたノウハウを伝授したくなる。
1巻の終わりでは、3年生部員が練習試合で足で相手をかき回して2球で先制点を奪い、主人公を感激させる。
あの長い謹慎処分のあと、作者たちの代が甲子園に挑戦するチャンスは3夏、3年生の最後の夏しか残されていなかった。彼らはそれを突破して夏の甲子園に出てきた。初戦、9対1でリードした9回表の場面で、隙を突いたベースランニングで10点目を陥れた。貪欲に点数を取る、最小限のヒットで最大限の得点を入れるというのがPL野球の本質だ。10点目のホームインした選手は私の取材にこういった。
「これがPLらしさです」
記事には「復活の王者」という見出しが躍った。
高校野球ファンならご存じの通り、PL学園野球部はいま存亡の危機に立たされている。しかし昔も今も「王者」という冠がつくのはこの野球部しかない。PL野球の魅力がたっぷりつまった漫画である。