国内

5歳の安倍晋三氏 デモ隊まね「アンポハンターイ」繰り返す

 米議会で壇上に立った安倍晋三・首相の顔には、「歴史に名を残した」という充足感が満ちていた。自民党史上初となる首相再登板を果たしてからの安倍首相は、時に党内からも“独裁者”との批判が上がる。数の論理を背景に集団的自衛権行使容認、憲法改正へと前のめりになるその姿は、60年安保締結を断行し、「昭和の妖怪」の異名をとった祖父・岸信介とも重なる。

 一方で、前回登板が敵前逃亡に終わったように、ガラスのシンゾウ、小心者との月旦評も少なくない。40年超の政治記者人生を安倍家取材に費やしてきた政治ジャーナリスト・野上忠興氏が、膨大な取材資料を元に人間・安倍晋三を形成したルーツに迫る。(文中敬称略)

 * * *
 1960年。東京・渋谷の南平台にあった岸の邸宅には、連日、日米安保条約改定に反対するデモ隊が押し寄せた。いわゆる60年安保闘争だ。

 その岸邸の中では、まだ5歳と幼かった安倍晋三と兄・寛信(当時7歳)がデモ隊の口まねをして、「アンポハンターイ! アンポハンターイ!」と繰り返すのを岸がニコニコしながら見ていた──安倍が政治の「原体験」としてよく語るエピソードである。

 だが、その背景に、甘えたい盛りの時期に両親が不在がちだったという家庭の事情があったこと、幼心に感じていた孤独が隠されていたことはほとんど語られていない。

 安倍は毎日新聞政治部記者だった父・晋太郎と岸の長女・洋子の次男として1954年9月に生まれた。2つ上の兄・寛信(現・三菱商事パッケージング社長)が父方の祖父・安倍寛と母方の祖父・岸信介から1字ずつ受け継いだのに対し、安倍は父の「晋」の字をもらったものの、次男なのに晋三と名付けられた。母の洋子に、なぜ晋三なのかと聞いたことがある。

「主人も私も女の子を欲しかったが、2人目も男の子だった。父(岸)は喜んでいましたが。名前の由来はよく聞かれますが、晋二より晋三の方が字画が良いとか。主人も字の据わりが良いからとはじめから『晋三だ』といいました」

 安倍の誕生は、まさに岸が権力への階段を駆け上がっていった時期に重なる。

 開戦時の東条内閣の商工大臣を務めた岸は敗戦後、A級戦犯として巣鴨プリズンに収監された。不起訴となり公職追放が解除されると、1953年の総選挙で国政に復帰。晋三誕生の翌年(1955年)の保守合同による自由民主党結成で初代幹事長に。1956年に石橋内閣の外相、1957年には首相へと瞬く間に頂上へ上りつめた。安倍が2歳の頃だ。

 岸のスピード出世に伴い、晋太郎は政治記者から総理秘書官に転身。そして1958年の総選挙に出馬するや、安倍家の状況は一変した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト