今年8月に安倍晋三首相により発表されるとみられる「戦後70年談話」。「一強多弱」の政界で、安倍首相の政権運営に正面切って異を唱える勢力はない。こんな時こそ本誌名物、もはや怖いもののなくなった老人党座談会の出番だ。政治と戦争を体験した村上正邦(82歳・元自民)、矢野絢也(83歳・元公明)、平野貞夫(79歳・元民主)の3氏が戦後70年談話について意見する。
村上:安倍さんは戦後70年談話を出すために、有識者懇談会まで作って議論させているでしょ。他人に決めてもらわなきゃ談話ひとつ出せないんだったら、談話なんておよしなさいよ。
平野:安倍さんは、耳元でささやく人が違ったことをいうと、発言が変わるじゃないですか。彼の特徴は理念というか、しっかりとしたものの考え方がないというところ(笑い)。これは、ガバナー(統治者)としては一つの能力でもあるんですけどね。
村上:(戦後50年談話を発表した)村山(富市元首相)さんと話して、なるほど偉い人だなと思ったのは、総理の椅子を自民党に返すタイミングをいつも考えていたっていうんだ。自民党に利用されていることはもちろんわかっていて、だけど戦後50年のけじめをつけることを天命とし、自身の熱烈な思いを語った。それが村山談話だったわけです。それくらいの思いがないのなら、談話なんてやめればいい。
矢野:もし安倍さんが談話を出すのなら、村山談話を継承して侵略を認め、お詫びと反省をし、今後の平和への誓いをしたうえで、「この手の談話はこれで終わり!」と宣言することですな。それならまだ意味がある。
村上:そうなんだ。談話っていうのは本当にあやふやで、河野談話があり、村山談話があり、小泉談話があり、それで今度は安倍談話だと。じゃあ、戦後80年にはまた、時の総理が談話を出してひっくり返すの?
矢野:50年の次は、普通に考えたら100年でいいでしょう(笑い)。60年談話を出した人(小泉純一郎氏)もよくなかったんだ。怒られるかもしれんが、ホンマにいつまでこんな非生産的なことをやるのか。他にやることあるやろ。
平野:背景に“政治”があるからですよ。50年、60年、70年でいちいち出すというのは馬鹿げているけど、それぞれ政治的な意図があるわけでしょう。
村上:要するに、安倍さんは何でもいいから政治史に自分の名前を残したいだけなんだよね。
※週刊ポスト2015年5月22日号