多くの記者に囲まれ経営計画を説明する高橋興三・シャープ社長
「液晶事業をさらに成長させるには多額の設備投資が必要で、いまのシャープでは満足に資金を投入できない。そこで、いずれJDIの大株主である産業革新機構(官民ファンド)からも出資を仰いだり、分社化してJDIと協業したりするなどの道も探られている」(全国紙記者)
高橋社長は会見で、「社内カンパニーの枠を超えた分社化は今のところ考えていない」と、液晶事業は自力で舵取りしていくと強調したが、資金難で需要が落ち込んでくれば経営の主導権を手放さなければならない事態も起こるだろう。
そうなると、残るシャープの主な事業は、洗濯機や冷蔵庫といった白物家電やオフィス向けの複写機事業ぐらいしかなくなってしまう。
「白物家電は世界的に見れば普及していない地域も多いのでシェアはまだ伸ばせるし、複写機も日系メーカーの牙城で継続的に利益を稼げる優良ビジネス」(前出・安田氏)との評価はあるが、会社全体の累積損失を穴埋めするだけの事業規模はない。
では、シャープは一体何の事業で生き延びていくのか。
「現状のままでは、遅かれ早かれ各事業を完全分社化して外部に切り売りしていかざるを得なくなるでしょう。大きなユニットとしてのシャープは存在できないという覚悟を持ったうえで、切り離すビジネスと稼げる製品の選択と集中をする必要があります」(関氏)
中期経営計画の結びには、「新しい価値を提供し続ける企業」として、“目の付けどころがシャープなシャープ”と謡われている。まずは「鋭敏」な構造改革が果たせなければ、ブランド自体の価値も消滅してしまうだろう。
●撮影/横溝敦