深刻な経営危機から脱せず、“会社解体”に近いリストラ案(中期経営計画)を打ち出すのではないかと見られていたシャープ。だが、フタを開けてみたら同社のいう「抜本的構造改革の断行」と呼ぶには甘すぎる内容だった。
シャープが5月14日に発表した2014年度の業績は、純利益が2223億円の巨額赤字となった。経営危機が表面化した2013年は、主力取引銀行の三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行から1000億円超の金融支援を受けて何とか凌いだが、再び業績悪化に陥り、純資産は2013年度の2071億円から445億円まで大幅に目減り。資金繰りでも「綱渡り」の経営が続く。
もはや自力での再建が不可能になったシャープは、今回も両行から優先株(融資を配当の高い株に転換)実施という奥の手を使って計2000億円、同じ方法で企業再生ファンドから250億円の出資を取り付けることに成功した。
だが、経済誌『月刊BOSS』編集委員の関慎夫氏は、「思い切った事業改革も示せないのに、よく金融機関は度重なる支援要請を受け入れたと思う」と呆れる。
「主だったリストラ案で出てきたのは、本社の売却と国内3500人の人員削減ぐらい。高橋興三社長も自らの経営責任は取らず、他の役員の代表権を外しただけで続投。これでは、いくら会見で『不退転の決意で生き残る』と意気込んでも社内外のモチベーションが保てるはずがありません。
肝心の事業についても、事業ごとに5つの社内カンパニー制に再構築すると発表しただけで、具体的な不採算事業の売却・撤退や工場閉鎖の新しい方針は出ませんでした。これでどうやって生き延びようというのか、まったく理解できません」(関氏)
当初、赤字に苦しむ液晶テレビ事業や太陽電池事業の大幅縮小や、それに伴う工場閉鎖は避けられないと見られていただけに、不採算事業の継続に疑問を抱く声が出るのは当然だ。事実、決算でもテレビなどデジタル情報家電部門と太陽電池のエネルギーソリューション部門が足を引っ張っている。
エース経済研究所の安田秀樹アナリストも同様の指摘をする。
「かつて大型テレビを製造していた亀山第2工場は、北米やアジアとの価格競争でテレビ事業の採算が合わなくなったために、タブレットやスマホ向けの中小型の液晶パネル生産にシフトしていますが、稼働率がなかなか上がらない状況です。
また、太陽電池事業も原材料の高コスト体質が続いているうえに、電力の買い取り価格が下げられるなど、いわば国策によって収益が変動してしまう不安定なビジネスです。本来、テレビも太陽電池も大幅な縮小ができればいいのですが、過大すぎる設備投資をしてきた事業のため、一気に整理ができない状況だといえます」
中小型液晶パネル事業はアップル向けの供給が堅調で、ジャパンディスプレイ(JDI/ソニー、日立、東芝の液晶事業が前身)、韓国LGディスプレイとシェアを分け合うほどシャープの中では“稼ぎ頭”となっているが、この事業の先行きまで危ぶまれている。