反日を謳う中国共産党政権が、絶対に矛先を向けない唯一の存在が、天皇である。中国歴代最高指導者は、具体的な問題で日本の政治家と対立しても構わないが、皇室に十分な敬意を払えば、日本人の心証がよくなり、国民の対中感情は良くなると確信していたようだ。それは、習近平氏が国家主席になる前の2009年に20分とはいえ天皇を表敬訪問した例にも現れている。
そして、いま中国では「天皇訪中」待望論が沸き起こっているという。産経新聞中国総局(北京)特派員の矢板明夫氏がレポートする。
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中国の著名な保守系サイト、四月網は4月8日に、「日本の天皇を軍事パレードに招待すべきだ」と題する論文を掲載した。筆者は習近平政権に近いとされる人民大学教授の王義キ(木偏に危)教授である。
「9月に北京で行われる抗日戦争勝利70周年の軍事パレードは、歴史を乗り越え未来を拓くためのものであり、決して憎しみの延長ではない。安倍首相よりも日本の天皇、もしくは皇太子を招待することがふさわしい」などと一方的な主張を展開した。
中国国内で、天皇の訪中を要請する声は常にあるが、最近になって再び高まっている。
王のような保守派陣営が中心だ。背景には、安倍政権が靖国参拝や尖閣問題などで中国との外交交渉で全く妥協せず、対日外交の展望が開けないことへの苛立ちがあると言われる。
また、中国当局がメディアを総動員して日本批判を展開しているが、富裕層にはほとんど効果がなく、日本観光や買い物ツアーが最近、大きなブームになっている。しかし一方、中国を訪れる日本の観光客は減る一方で、日本国内で実施した世論調査でも中国に対し悪い印象を持つ日本人も増え続けている。
中国保守派は日本の右翼やメディアによる反中宣伝のせいだと考えている。そこで右翼に大きな影響力を持つ天皇を招待し、中国で日中親善をアピールしてもらい、日本国内の対中感情が一気に改善できるのではないかと考えているようだ。