6年ぶりの主演映画『種まく旅人 くにうみの郷』で、アメリカ帰りの農水省のエリート官僚を演じた女優・栗山千明(30才)。モデルを経て女優として活動を始めてから、これまで『キル・ビルVol.1』といったハリウッド作品から、日本でも多くの映画、ドラマ、舞台で活躍している。彼女が、女優として飛躍するきっかけとは――。シリーズ企画「転機」の今回は、第一線で輝き続ける実力派女優・栗山千明に話を聞いた。
――女優として栗山さん自身、さまざまな転機があったと思いますが…。
栗山:毎回一つひとつ得るものがあるので、なにか一つというと難しいんですが…。パッと思いつくのが『ハゲタカ』というNHKの連続ドラマです。それまで10代では妖怪とか幽霊とか殺し屋とか、要はリアリティーのない役をずっとやってきました(笑い)。
それはそれで楽しかったのですが、『ハゲタカ』で初めてリアリティーのある役、経済ジャーナリストでしたが、地に足のついた女性を演じることになったんです。
――毎日胃が痛くなるほど現場に行くのがつらかったそうですね。
栗山:役柄だけでなく、経済ものでしたので内容を理解すること自体がすごく難しかったんです。作品も重くまじめな話ですし、大先輩たちと一緒でしたので日々緊張しっぱなし。自分の気持ちを出しながら表現していましたが、芝居のアプローチがそれまでとはまったく違いました。それと、このドラマによってみなさんが抱く私のイメージも変わったのかなと思います。社会派のドラマに出たことで私の存在を知ってくださった人が増えました。個性的な役だけではなく、こういう役もやるんだ、と思った人が多かったと思います。
もう一つ、転機として挙げていいのであれば、初めての舞台がそうです。蜷川幸雄さん演出の『道元の冒険』。ドラマと映画も違いはありますが、カメラを回されていることが同じだと思えば、大きく差はありません。でも、舞台は違う。カメラを向けられて映っているところだけが芝居ではない空間です。そこに置かれたときはすごく怖い。舞台をやる前まで、「舞台なんて恐ろしい。とんでもない」と思っていたんです。ところが、実際に飛び込んでみたら、舞台の作り方を知るきっかけにもなりましたし、自分の思いを届けたいという気持ちになれたんです。
――思いをお客さんに届ける、ですか?