「300メートル以内の規制で済む小規模噴火の可能性はたしかにあります。2001年には箱根山付近で群発地震と地殻変動が観測されましたが、噴火はなかった。ただ、歴史を見ると箱根山は大噴火を起こしている火山です。今から6万~9万年ほど前の大噴火では300度を超える熱さの火砕流が50キロメートル離れた現在の横浜市付近にまで達したことがあります。
しかも箱根は正確な噴火データが観測されていない。桜島や有珠山などは近年も噴火しているから予兆のデータが豊富にあります。有珠山では2000年の噴火の直前に周辺住民1万人を避難させることができましたが、数少ない例外です。
箱根の場合、3000年以上前が最後のマグマ噴火ですから、火山性地震が増えた、火山性ガスの成分が変わった、といったデータが取れても、それらが噴火の予兆か判断できない。起きるかもしれないし、起きないかもしれない。データと真摯に向き合えばそうとしかいえない」
予知に限界があるのは仕方がない。政府・行政に求められるのは、限界を認めた上で、観光業への配慮とは関係なく正確なデータを素早く公開することである。観光業への支援は別の方法を考えればよい。ましてメディアが危機に鈍感なことは許し難く、これでは御嶽の悲劇は必ず繰り返される。
※週刊ポスト2015年5月29日号