日本球界随一の“頭脳派投手”桑田真澄氏は38歳で米大リーグに挑戦した。メジャー挑戦でわかった日本野球との違い、少年野球による弊害について、桑田氏が語った。
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僕の場合、選手としての全盛期ではなく最晩年のメジャー挑戦でした。ですからメジャーのマウンドに立つことに加えて、「アメリカの野球をメジャーからマイナーまで直接見て、その後の野球人生に役立てること」を目的にしていました。
メジャーは「パワーとスピード」がすべてというイメージで渡米しましたが、実際にプレーしてわかったのはトップ選手は細かい技術も日本以上だったことです。エース級はフォームも良くコントロールも素晴らしい。好打者は地道な練習を丹念に積み重ねていた。
その上メジャーの首脳陣は日本野球を研究していて、エンドランやバントなどスモールベースボールを吸収している。「体格が段違いなのに細かい野球までやられてはかなわない」というのが正直な感想でした。
ただしメジャーに日本流のスモールベースボールが「根っこ」まで浸透しているかは疑問です。それは相手を思いやるプレーのこと。たとえば捕球した相手が次の動作に移りやすい位置にタイミングよくボールを投げたりといった繊細な配慮は日本の選手のほうが何倍も優れています。メジャーの大多数はやはり「オレが、オレが」の世界で、バントや中継プレーの真髄をどこまで理解しているか疑わしいところがありました。