首相官邸に侵入した事件を機に利用を規制する法整備が急ピッチで進められているが、小型無人飛行機・ドローンは流通や警備、災害救助など様々な分野での活用が期待されている。「空の産業革命」を生み出すといわれるドローン。その可能性に魅せられた写真家・林明輝氏は2年にわたり日本列島を撮り続けた。
「最大の魅力は、人が普段近づけない場所から自由なアングルで写真が撮れるということです」──林氏は、いち早くドローンの可能性を確信した。今までは出会えなかった風景の数々。ドローンを使い始めてから2年間での撮影日数は450日以上に及ぶ。
使用するドローンは1台約50万円。そこに1kg程度のカメラとレンズを吊るし、常に映し出される画像をモニターで確認しながらドローンを操縦、シャッターを切るという作業を一人で行なう。手ぶれ補正機能を搭載した軽量なミラーレスカメラの出現により、低速シャッターでもぶれることなく撮影ができるようになったというが、それでもドローンでの撮影は難しい。
「地上での撮影と違って、ドローンを使っての撮影は長時間できません。1回で飛べるのは20分ほど。5回繰り返して撮れるのは約1000カットです」
その中でも狙い通りの構図や光、色が揃い満足できる写真はわずか数カットだという。しかし、何より神経を使うのは撮影の許可取りだ。
「たとえば百四丈滝のように国立公園の場合は、環境省と林野庁に申請します。また、申請から許可まで1か月近くかかるところもあります。許可が義務付けられていない場所でも、マナーとして管理・所有者に許可を取ってから行ないます」
セスナからの空撮とはひと味違う臨場感を写し出す新しい技術。その可能性が失われないことを願う。
撮影■林明輝(りん・めいき):1969年、神奈川・横須賀市生まれ。写真集に『森の瞬間』(小学館刊)、『水物語』(平凡社刊)など。写真展「空飛ぶ写真機」が来年4月まで各地で開催予定。詳細はhttp://homepage2.nifty.com/rin-meiki/まで。『林明輝[ドローン]写真集 空飛ぶ写真機』は平凡社より発売中。
※週刊ポスト2015年6月5日号