吉田松陰の妹・文(ふみ)を主演の井上真央が演じ、その周りをイケメン俳優で固めたNHK大河ドラマ『花燃ゆ』。キャスティングは確かに華やかだが、ストーリーには「史実と違いすぎる」との批判が絶えない。
4月12日放送の第15話『塾を守れ!』は、吉田松陰(伊勢谷友介)が老中暗殺を計画した罪で安政6年(1859年)の元旦を長州藩の野山獄(現・山口県萩市)で迎えるところから始まる。
獄中でなお老中暗殺を諦めない松陰は、文の最初の夫で江戸にいる久坂玄瑞(東出昌大)に計画に賛同するよう手紙を書くが、久坂と高杉晋作(高良健吾)から計画に反対する血判状が返ってくる。松陰は激怒し、絶交を宣言する。郷土史家はこのシーンの不可解さを指摘する。
「血判状は桂小五郎が江戸から萩に帰る際に、久坂、高杉から預かり、松陰に渡したとされている。ところが、ドラマでは桂小五郎が登場しないのです。血判状は巻物になり、現在は宮内庁書陵部に『木戸家文書』として所蔵されています。松陰が血判状を突き返したから、木戸家(桂小五郎は維新後に木戸孝允に改名)に残ったのです」
血判状を運んだ桂小五郎は、薩摩の西郷隆盛、大久保利通と並んで維新三傑に数えられる長州の大物で、ドラマでは東山紀之というビッグネームがキャスティングされている。にもかかわらず、伊勢谷演じる松陰に血判状を手渡すシーンに東山は登場しない。
そもそも松陰と桂は親友とされ、松陰自身も血判状の件に関する書簡で、「桂は僕の無二の同志友なれど」と書き残している。