チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世はこのほど、東京都内でジャーナリストの相馬勝氏の単独インタビューに応じた。後継者の選び方について彼はどのように考えているのか? 相馬氏の質問にダライ・ラマはこう答えている。
──あなたは今年7月に80歳の誕生日を迎えますが、ご自分で完全に引退する年齢を決めていますか?
「私は2001年に政治的な責任を減らすという半分引退を宣言し、2011年には政治的に完全引退しました。これで政治的な責任は一切負わないことになりました。それから、すでに4年が経ち、私の完全引退とともに、ダライ・ラマ制度も一時的にせよ、正式にかつ自発的に、誇りを持って終わりにしたいのです。
かりに、(私の死後)ダライ・ラマ制度が残ったとしても、新たなダライ・ラマは私同様、政治的な権限は持たないことになります」
──しかし、あなたはチベット仏教におけるシンボルのような存在ではないのですか。
「それは外国人の見方であり、チベット仏教を誤解しています。チベット仏教は一人のラマ僧に代表されるようなラマイズムではなく、純粋な仏教なのです。チベットに仏教が伝えられたのは7世紀。ダライ・ラマ制度が始まったのは14世紀で、輪廻転生制度はほぼ400年続いています。つまり、ダライ・ラマがいようがいまいが、チベット仏教の伝統は命脈を保つことになります。
ダライ・ラマ制度がチベット仏教の発展や存続に貢献した面もありますが、仏教そのものからみれば、ダライ・ラマは必ずしも必要な制度ではないのです。私はダライ・ラマとして精一杯務めてきましたが、ダライ・ラマ最後の日がきても、まったく心配することはないのです」