伝説のカリスマホストと呼ばれ、タレント転身後はバラエティーでブレイク、現在は”料理キャラ”としても活躍している城咲仁(37才)。そんな城咲に、「芝居の父」と慕うある人物とのエピソード、俳優業への意気込み、そして今のホスト界について話を聞いた。
――ホスト業界ではトップに君臨していた城咲さんですが、芸能界に入って、挫折したり、つらかったことはありますか?
城咲:つらいですよ。楽しいんですけど、特殊な仕事じゃないですか。俳優業に力を入れているので、ドラマを見ていて、悔しい思いを常にしています。あそこに立ちたかったなって。最近で言うと、佐藤健さんの『天皇の料理番』(TBS系)。料理が好きなので見ていると、ぼくは包丁を使えるのにお声がかからないということは、料理はできるんだけど、役者としてそこのポジションに行けていないんだなとか。
――そんなときに思い出すような、先輩のアドバイスはありますか?
城咲:坂上忍さんが演出していた芝居で、坂上さんに「自分がなにもできないことを、1回受け入れなさい」と言われたんです。ぼくは投資詐欺にあった役で、「お金を返してください」と土下座をするんですけど、土下座が格好つけすぎだと言われて。「土下座したことがあるのか! 格好つけんじゃねえ! 土下座ってなんだ、人にへりくだって謝ることだろ!」って。そのあと別室に呼ばれて、できないことを受け入れろと。
「お前は現実、役者としての仕事がないんだから、しがみつけ」と言われた時に、楽になったんです。スタート地点に立てたんですよね。荷物を下ろせと言われた気がしました。重かったんですよ。バラエティーでデビューして、役者になりきれていない自分が、役者をやることの重荷。得体のしれないものを、なんか、下ろした気がしたんです。
――坂上さんに言われた後で、演技は変わりました?
城咲:変わりました。どこかに城咲仁臭というか、ダサい役をやっていても、ダサくない歩き方をしていたんです。6年間歌舞伎町で、見栄や虚勢を張って生きていた人間が、それを抜くという作業って難しかったんですね。
――土下座の演技はどうなりました?
城咲:力が抜けました。手を付いた時に、肩を張っていたみたいなんです。イメージでいうと、『白い巨塔』の財前五郎。財前五郎が頭を下げてるんだけど、心の中では頭を下げてない、のに近いのかなって。それが、肩をすくめて小さく怯えて手をついた時に、変わったんでしょうね。
――坂上さんが、城咲さんの演技を変えた。