この6月に入って警察は関東最大のテキヤ組織で指定暴力団「極東会」(本部・東京都豊島区)の松山眞一会長(87)と、博徒系の指定暴力団「住吉会」(本部・東京都港区)の関功会長(69)を相次いで逮捕した。
警察による執拗な暴力団撲滅作戦は、ヤクザの金集めの手段(シノギ)を変質させているという。ジャーナリストの伊藤博敏氏が現状をレポートする。
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バブル期に山口組系企業舎弟だった人物が懐かしむ。
「(1992年施行の)暴対法の前と後では様変わりした。それまでは債権回収、企業の倒産整理、地上げ、総会屋を使った企業からの金集め、歌手や格闘技の興行など、合法な仕事は山ほどあった。今はすべてが非合法で、ちょっと動けばすぐにパクられる」
暴排条例の施行もあり、暴力団関係者が手を出せる「表の商売」は事実上なくなった。すると、彼らは「裏の仕事」でしか稼げなくなる。
山口組が覚醒剤を扱うことを「御法度」にしているのはよく知られている。住吉会は2014年秋、会の規則に振り込め詐欺を禁止することを明記した。組員がそれらに手を染めれば破門になるという。
それでも今、暴力団のシノギは覚醒剤と振り込め詐欺の2つが中核で、恐喝、売春、ノミ行為、裏カジノなどの博打が続く。住吉会系元組長が嘆く。
「シマを持ち、シマ内のことなら揉め事や厄介事を体を張って阻止する。その代わりに、みかじめ料をもらって地域と共存共栄を図る時代には、まだ俺たちの存在意義があった。年寄りを騙して稼ぐなんて、今の若い連中のやり方にはとてもついていけない」