社長をはじめ役員の報酬は一体いくらが妥当なのか――。3月の決算期を終え、株主総会ラッシュのこの時期、必ず話題にのぼるテーマだ。
今年もカルロス・ゴーン・日産自動車社長の10億3500万円、豊田章男・トヨタ自動車社長の3億5200万円、平井一夫・ソニー社長の3億1590万円、小林健・三菱商事社長の2億6600万円など、名だたる上場企業のトップたちは、軒並み1億円超えの年収額を開示した。
だが、それらの企業以上に度肝を抜く巨額報酬で物議をかもしたのがソフトバンク。ロナルド・フィッシャー取締役が17億9100万円でいきなりトップに躍り出たばかりか、昨年9月に米グーグルからヘッドハンティングされたニケシュ・アローラ副社長に、契約金も含めて165億5600万円もの大金を支払ったことが同社の有価証券報告書より明らかになった。
ネット上では、〈一般社員とのあまりの格差にやる気を失った〉と転職をも匂わせる社員の声や、〈幹部165人に1億円ずつ払ったほうがコストパフォーマンスは上がると思う〉といった経営方針への異議、さらには〈そんなに役員に払うカネがあるなら通信料を安くしてほしい〉というユーザーの不満まで渦巻いた。
欧米ではCEO(最高経営責任者)にメジャーリーガー級の報酬を支払う企業は珍しくないが、事業のグローバル化や海外拠点の拡充などを進める日本企業も、“グローバル基準”に倣った役員報酬体系になってきたということか。
経済評論家の山崎元氏が解説する。
「米国企業における経営者の値段は、いわば株主との利害関係に基づいています。売り上げ増加やROE(株主資本利益率)向上など業績に対する貢献度を重視し、最終的に株価を上げてくれれば社長の報酬がいくら高くても構わないという考え方です。
その点、日本企業の社長は“会社の長”というよりも“社員の長”の意味合いが濃く、あまりにも社員給料とのバランスを欠くような高額報酬はもらいにくい環境にありました。しかし、最近は社長に自社株買いをさせて株価や時価総額に連動した報酬にするような動きも出てきているので、だんだん米国流に近づいているといえます」
日本人でもオリックスの宮内義彦元会長(現シニア・チェアマン)のように約55億円もの役員報酬を受け取る人はいるが、同氏はオーナー経営者ゆえに報酬内訳の8割以上が功労金だ。また、昨年は自動車部品メーカー、ユーシン会長兼社長の田邊耕二氏が14億円の報酬を受け取ったが、こちらも創業一族である。