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TV番組の覆面インタビュー ごく限られたケースに限定すべき

 長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』で知られる鎌田實医師は、NHKの放送番組審議会の委員も務めている。NHK『クローズアップ現代』のやらせ疑惑をきっかけに、テレビ番組でよく見かける報道の在り方について鎌田氏が考えた。

 * * *
 たまにテレビを観ようと、番組表を眺めても、観たい番組が少ないことに驚く。夜のゴールデンタイム、民放はどの局も同じようなタレントが、お笑いやクイズ番組でお茶を濁している。

 テレビで人生や哲学を学ぼうとは、もちろん思わない。テレビにはテレビの軽さがあっていい。

 しかし情報番組でも教養番組でも、もう少しテレビならではの発信の仕方があるのではなかろうか。

 このところ、テレビ業界でちょっとしたトラブルが相次いだ。NHK『クローズアップ現代』とテレビ朝日『報道ステーション』の問題である。

『クローズアップ現代』の問題は、昨年5月14日に放送された「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」内での、やらせ疑惑だ。

 多重債務者がブローカーを利用して出家の儀式を受け、戸籍名を変更して融資詐欺を行なっているという内容だった。

 ところがブローカーと言われた人物は「自分はブローカーではない。犯罪者のように扱われたことに憤りを感じる」と語り、ブローカーを演じてほしいと依頼されたことを明らかにした。

 さらに、この男性が放送倫理・番組向上機構(BPO)の人権委員会に申し立てたから、大騒ぎになった。

 NHKでは、この問題について調査委員会を設置した。その最終報告書では、事実のねつ造につながる、いわゆる「やらせ」はなかったが、過剰な演出や出演者に誤解を与える編集が行なわれていたと発表した。

 僕は、NHKの放送番組審議会の委員をしている。この会は放送番組の適正を図るため、放送法で設置が義務づけられている審議機関だ。委員長、副委員長のほかに委員がいて、総勢10名前後の学識者で構成されている。今年5月の審議会でも『クローズアップ現代』の問題が取り上げられた。

「出家詐欺を取り上げたこの番組の企画そのものは良いと思う。無理をしなくても良い番組になったのではないか」

 僕は、そう意見を述べた。

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