巨人は近年、絶対的な扇の要として正捕手・阿部慎之助が君臨してきた。だがその阿部が衰えてきたというのに、将来の正捕手候補としてドラフト1位で獲得した小林誠司を5月16日のヤクルト戦を最後に起用せず二軍落ちさせている(6月24日現在。以下データすべて同)。小林は「一軍でいい経験をさせてもらったので、二軍でしっかりと力をつけて上に戻りたい」と前向きに頑張っている。
「一軍復帰の目安として、岡崎郁・二軍監督は“マスクを被った時の勝敗が五分以上になること”を挙げています。当初は二軍で4勝7敗と負け越すなど、結果を残せなかったが、最近は安定感が出てきました」(巨人担当記者)
二軍捕手成績を見ると、勝ち数が多い順に鬼屋敷正人が9勝5敗で河野元貴が8勝7敗、続いて小林は7勝8敗だ。『プロ野球何でもランキング』(イースト・プレス刊)などの著書がある、野球データに詳しいライター・広尾晃氏が語る。
「二軍での成績をまとめると、ともに6年目で24歳の河野と鬼屋敷が活躍していますが、小林も十分渡り合っています。五分以上という条件クリアもすぐそこに見えている。
巨人は小林を使わない手はない。一軍でのデータを見ると、相川(亮二)は阿部よりも“打てる捕手”だが、肝心の守備成績が酷い。實松(一成)は“専守防衛型”の割にパスボールが多い。小林は確かに打撃で相川に劣るが、捕手は何よりも守備が重視されるポジションです」
巨人一軍捕手の打率は.264の阿部を.339の相川が上回るが、相川は1試合平均でいくつのアウトに寄与したかを示すRF=レンジ・ファクターの数値が5.83と小林の6.70より低く、守備範囲が狭い。パスボール数は阿部が0で小林と相川は2、實松は5もある。
1960年代から1970年代の中日を支え、「打てる捕手」としてベストナインに5度輝いた木俣達彦氏でさえも、「捕手はまず守備が優先です。一番は肩。セカンドでランナーを刺せるかどうか。次がリードの良さ、キャッチングの安定性と続く。バッティングは最後です」と語る。
小林にはもう一つ、他の控え捕手にはない「能力」がある。それは投手の捕手別防御率から見えてくる。小林は今年の巨人を引っ張っている若手投手との相性が良い。特に菅野智之、高木勇人との成績は注目に値する。