次に中国だ。中国は外貨準備が潤沢とはいえ、そもそもギリシャを支援する理由に乏しい。最優先事項は南シナ海や東シナ海での勢力圏拡大である。ギリシャに介入すれば、欧州を刺激するのは確実だ。南シナ海をめぐって米国ともめている最中に余計な荷物は抱えたくないだろう。
新たなマネーが入ってこないなら、国内経済を回していくために、ギリシャは枯渇したユーロに代わる通貨が必要になる。ドラクマ復活だ。それで肉や野菜と交換するが、もちろん価格は暴騰する。
ドラクマ復活でなく、公務員の給料代わりにIOUと呼ばれる借金証書を発行する案もあるが、これも実質的には第2通貨のようなものだ。
結局、欧州の要求を受け入れるにせよ、拒否してドラクマを復活させるにせよ、生活の窮乏化は必至である。それは悪いことか。目先は辛いだろうが、正しいことだ。
どうあがいても、身の丈以上の暮らしは長く続かない。辛くても、ここはいったんリセットして立て直す以外にないのである。他国の信用のおかげで野放図な暮らしが許されるとなったら、真面目に働く国や国民がばかばかしくなる。生活規律も、ひいては国際秩序も乱れてしまう。
■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)
※週刊ポスト2015年7月17・24日号