スイス・チューリッヒの静謐(せいひつ)な湖畔が突如喧騒に包まれた。5月28日、米司法省の依頼を受けたスイス当局がFIFA(国際サッカー連盟)の幹部7人を贈収賄や資金洗浄の疑いで逮捕した。不正資金の総額は現時点で約1億5000万ドル。捜査の進捗が望まれるなか、“あの疑惑”の解明を望む声まで出始めた。
摘発は「序章」に過ぎない。米司法省の起訴状によれば、腐敗は約20年前から始まっていたという。既に辞任を発表したゼップ・ブラッター会長以下、不正に関わった幹部は戦々恐々としているだろう。さらにFIFA汚職問題は、思わぬ場所に飛び火した。
〈きっと2002年ワールドカップについても賄賂が明らかになるだろう〉
FIFA幹部の逮捕翌日、イタリア紙「コリエレ・デッロ・スポルト」は、こんな疑義を呈した。記事の意味するところは、日韓W杯、決勝トーナメント1回戦の韓国対イタリアにおける“疑惑の判定”の真相究明である。
韓国代表の悪質なスライディングが相次いでも笛はならない。そして1対1で迎えた後半アディショナルタイム、イタリアの10番・トッティーがシミュレーション(審判を欺くプレー)をとられ、逆に退場に。劣勢となったイタリアはその後、延長戦で力尽き、韓国の安貞桓(アンジョンファン)が劇的ヘディングで決勝点を挙げた。
韓国寄りのジャッジは、ホームコートアドバンテージと呼ぶには余りあった。その後、主審のエクアドル人のバイロン・モレノ氏が違法薬物売買で逮捕されたことと相俟って、憶測を呼んだ。審判は買収されていたのではないか。大会を盛り上げるために開催国を勝たせたに違いない。