日本と韓国を代表する企業といえば、トヨタとサムスンに違いない。2014年度営業利益が2兆7505億円を計上したトヨタ。他方のサムスンは、スマートフォンや半導体などの事業を展開し、資産総額は300兆ウォン超(約33兆円)。
両社に共通するのは、創業者の一族が経営の根幹に関わるということだ。前近代的なスタイルとの批判が根強いが、ショートターミズム(近視眼主義)や意思決定の分散化を回避できる利点がある。だが、そんな両社も、ここにきて明暗が分かれている。ジャーナリストの岸建一氏がレポートする。
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サムスングループの総帥、創業者の三男であるサムスン電子会長の李健熙(イ・コンヒ)氏は徹底したトップダウン方式で知られる。それを支えているのは人事での信賞必罰と成果主義だ。約40万人の従業員を抱えるサムスングループには「役員」と呼ばれる幹部が2000人ほどいる。
役員になれば、高額の報酬と高級車での送迎など好待遇が約束される。常務に昇進すれば給料は数割増になり、専務になれば倍増する。社員は成功物語を夢見るが、役員になれる「定年」は46歳程度。そこに達しない社員は「肩たたき」の対象となる。
さらに役員になっても重圧から逃れられない。結果の出ない役員が突然、職場を去り、長期休養を命じられる必罰もあるからだ。健熙氏がしばしば口ずさむ言葉がある。
「私の人事方針は常に信賞必罰。よくやった人は抜てきし、そうでない人は抑え付ける」
トヨタもグループ従業員は約34万人超。しかし、彼らを束ねるのは、サムスンとは逆の思想だ。それが、もの造りの現場から編み出された人材育成のメソッドだ。ミスが起こっても「人を責めずに仕組みを責める」という姿勢である。人を変えるのではなく、仕組みを”カイゼン”することで職場を向上させてきた。
豊田章男社長の口癖はこうだ。
「現場はもっと自由にやっていい。その代わり、その責任はすべて俺がとる」