神経は「見る」「聞く」などの知覚を担うものと、筋肉を動かすものがある。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は随意筋(ずいいきん)を直接動かす神経が死滅して、筋肉が動かせなくなる病気だ。進行が速く、最終的には呼吸にかかわる筋肉を動かす神経が障害され、発症から平均2~3年で死に至る。40歳以上の働き盛りに発症し、男性は女性より少し発症率が高い。
体内の随意筋を動かす神経が障害されるため、初期症状は人によってかなり違う。四肢の症状から始まる場合でも、指先の筋肉を動かす神経が障害されれば、ペットボトルの蓋や鍵が開けられない。肩の筋肉が弱くなれば、荷物を棚に上げられない。太ももの筋肉の神経が障害されれば、しゃがんだ姿勢から立ち上がるのが困難となる。
言葉がうまく出てこない言語障害や、嚥下(えんげ)障害などから始まることもあり、症状が多彩なため、同じ病気だとは思えない。
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの郭伸(かくしん)客員研究員に話を聞いた。
「四肢の筋萎縮や筋力低下がある場合は、整形外科を受診することがあります。言語障害では、脳血管障害が疑われることもあります。ALSはCTやMRIでの画像診断を行なっても異常は見られません。運動機能悪化が進行する場合は、ALSの可能性があるので、専門医で早期診断が必要です」